江戸川学園取手が延長10回タイブレークの末、甲子園に春2回、夏3回出場の強豪・藤代にサヨナラ勝利した。

試合開始直前から降り始めた雨が、いっそう強くなった10回。江戸川学園取手は3-3の同点に追いつき、なおも2死二、三塁から工藤孝太郎外野手(3年)が少し甘く入った真っすぐを捉え、中前にサヨナラ適時打を放った。「自分で決めてやると思っていた」と笑顔を見せた。工藤は2回にも2死二塁から先制打となる左越え適時二塁打でチームに流れを引き寄せた。島崎弘和監督(57)は「日ごろから真面目で謙虚に練習に取り組む子。最初の打席で打ってくれたので、きっと工藤にいい打順が回ってきて、またヒットを打つかなと思っていたんです」と目を細めた。

野球をやめなくてよかった。夏の甲子園が中止になった時。国公立大の理系への進学を希望している工藤は「もう野球を辞めて進学へ切り替えよう」と考えていた。そんなとき、選手だけのオンラインミーティングがあった。「今まで、みんなでつらい練習を乗り越えてきた。誰か1人でも欠けたら寂しい。最後はみんな思い切って野球をやって終わろうよ」。チームメートがみんな声をかけてくれた。画面に映るチームメートの笑顔。工藤は「みんなの顔を見たら、一緒に頑張ってみようと思いました」。野球で完全燃焼を誓った。

江戸川学園取手は県内屈指の進学校。毎日の練習は夕方4時から7時までの約3時間。短い練習時間を効率よく使うため、守備、打撃と日替わりで練習メニューを組み工夫した。島崎監督は「雨の日も、ボールがぬれていたらどうしたらいいのかを考えて練習する。考えながら練習してきたことが、つながっているのでは」と話した。試験前、練習を自習時間に替えると、約3時間、誰1人としてトイレにも立たずに勉強する集中力も野球につなげた。「この集中力は立派。大した練習もできていないのに、この舞台で粘り強さを発揮できるとは」と選手たちに脱帽した。

サヨナラ適時打を放った工藤も、毎日、野球部の練習が終わり家に帰ると仮眠を取り、気持ちを切り替えて2時間の勉強。「しっかり両立できたからここまで来られた」と成長を自信に変えた。「今日、勝ちきれたので明日もしっかり気持ちを入れて頑張ります」と胸を張った。【保坂淑子】