大阪桐蔭がこの夏の初戦で2本塁打を含む12得点を挙げ快勝発進した。プロ志望届を出す予定の仲三河優太外野手(3年)が右足親指を負傷しベンチ外。正捕手の吉安遼哉捕手(3年)、正遊撃手の伊東光亮内野手(3年)もベンチ外とレギュラー3人を欠いたが、公式戦で初めて5番に起用された上野海斗外野手(3年)が2回無死一塁から中堅へ先制2ラン。流れを一気に引き寄せた。

普段は下位打線を打つ上野は熊本県菊陽町出身。「打撃力に憧れて」大阪桐蔭に入学した。武蔵丘中2年になったばかりの16年4月、熊本地震で被災。自宅は半壊し両親と弟との4人で1週間程度、ワンボックスカーで車中泊生活だった。水道の水はにごり、電気は1週間使えなかった。「(熊本北シニアでの)練習も1、2カ月できなかった。あの時の経験が今につながっている。感謝する心というか、今の状況が当たり前じゃない、野球がやれることに感謝している」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、センバツも春の大会も夏の甲子園大会も中止になったが、上野はそれでも大阪府の独自大会、甲子園交流試合とプレーできる機会をつくってもらったことに感謝する。

新型コロナウイルスで寮が閉鎖した4月、帰省した時に両親から「別に結果を出さなくていい。最後も頑張る姿を見せてほしい」と言われた。その両親は日程が合わずスタンドで観戦できなかった。当初7月26日が初戦だったが、吹田が休校していた影響などで試合が1週間遅れとなった。「しっかり結果を出して親に届けられたらいいと思っていたので」。目の前では見せられなかったが、公式戦2本目、通算13本目の本塁打と快勝のニュースを届けた。【石橋隆雄】