第60回春季全道高校野球地区予選の組み合わせ抽選が4月30日、旭川など5地区で行われた。昨秋の全道大会準優勝の旭川実は初戦で留萌との対戦が決まった。プロ注目の最速147キロ右腕、田中楓基投手(3年)は、昨秋全道大会決勝で0-1で敗れた北海への雪辱を誓った。

   ◇   ◇   ◇

旭川実の田中が雪辱に燃えている。今春の目標は昨秋全道大会決勝で敗れた北海を倒しての全道制覇。「やりたいですね。リベンジしてやりたい」。北海のエース左腕木村大成投手(3年)との再戦を心待ちにしている。

木村との息詰まる投手戦になった昨秋決勝は1球に泣いた。7回まで無失点の好投も、8回2死で北海3番江口に痛恨の1発を浴び0-1で惜しくも敗れた。「失投で打たれてしまった。悔しかった」。9回2安打完封、11奪三振の木村との力の差を痛感した。「ボールの質、変化球のキレ、今までああいうピッチャーを見たことがなかった。自分が思ったより体も大きかった。体で負けたら勝負も出来ない。負けてらんない」と奮い立った。頻繁に連絡を取っている木村の存在を刺激にしてきた。

悔しさを糧に、冬は「筋力強化の教科書」という本を読みながら、ウエートトレーニングを中心に体を鍛え抜いた。間食含め食事を1日4~5食に増やし、一冬で体重は7キロ増の78キロになり体は一回り大きくなった。「去年より思い切り投げなくても、球速が出ている」と手応えもある。

刺激となる投手がもう1人いる。幼なじみで大阪桐蔭のエース松浦慶斗だ。センバツ甲子園のマウンドに立つ左腕の姿に「すごいなと思った。自分もそこで投げたいなと思った」。正月に松浦が帰省した際には野球談議を交わした。変化球の話題にもなり、参考になることも多かった。

岡本大輔監督(48)は「取り組む姿勢は元々ストイックな性格だが、さらにチームの中でもリーダーシップを発揮しながらやってくれている」と目を細める。「甲子園に絶対行くというのが1番の目標」と話す田中。本番の夏を前にまずは前哨戦となる春の戦いに挑む。【山崎純一】

◆田中楓基(たなか・ふうき)2003年(平15)8月23日、旭川市生まれ。旭川新富小1年から野球をはじめ、旭川明星中時代は軟式野球部に所属。旭川実では1年春に背番号1をつけ初めてベンチ入り。最速147キロで変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。目標の選手は楽天涌井。家族は両親と兄、弟。50メートル走6秒3。遠投100メートル。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。

○…知内は届かなかった聖地への思いを春、そして夏につなげる。昨秋は全道4強進出でセンバツ21世紀枠候補校に選出も、代表には選ばれなかった。吉川英昭監督(44)は「少しショックを受けている選手もいたが3月のセンバツ開幕を境に、やらなきゃいけないという思いからか落ち着いてきた」。昨秋は全道準決勝で優勝した北海木村に3安打無得点に抑えられ0-6で敗れた。同監督は「ずっと『北海を倒すんだ』と言い続けている」と話した。

○…クラークは初の春全道制覇を狙う。昨夏は道高野連独自開催の北北海道大会優勝も、秋は全道初戦で札幌日大に敗れた。佐々木啓司監督(65)は「投手力は悪くなかったが“俺たちのチームだ”という意識が不足していたように思う」と振り返った。コロナ禍で例年春先に行ってきた道外遠征が中止も、道内で練習試合10戦程度を消化。同監督は「実戦はいつもの3分の1ぐらいだが、その分、紅白戦を多めに実施してきた。目標は北海道大会優勝」と話した。

○…士別翔雲は昨秋、地区初戦敗退(稚内大谷に7-13)の屈辱を晴らす。渡辺雄介監督(39)は19年春以来の道大会進出を視野に「何とか春に全道に出て経験を踏ませ、夏につなげたい」。コロナ禍で春の和歌山遠征が中止になることを見越し、冬休み期間に雪を固め、みっちり雪上ノックで守備を鍛えた。昨年までは週末限定、内野だけで行っていたが、今冬は外野も固め2週間程度、継続して実施。早い時期から屋外で調整してきた成果を出す。

○…武修館は17年以来の春全道を目指す。昨秋全道は準決勝で旭川実に1-10の7回コールド負け。打線が相手右腕の田中に散発5安打1点に抑えられ、エース倉宏太朗(3年)が7回途中11安打8失点と打ち込まれた。小林正人監督(33)は「基本的な部分の差が出た。冬場はアウトを取るための基礎から意識させてきた」。前江陵監督でソフトバンク古谷を育てた谷本献悟新部長(40)が技術面、戦術面は小林監督と、分担しながら全道制覇を狙う。