18年ぶり出場の浜田(島根)が今春センバツ出場校の有田工(佐賀)に堂々と競り勝った。試合後の整列で、審判団に声を掛けられた。「この試合ができるのは奇跡」。相手を敬い、喜びをかみしめた。

「隠れた好プレー」が勝因だ。1回に先制され、2回も2死満塁。左打ちの山口駿の詰まったライナーが左翼線を襲う。先発波田も「落ちた…」とあせった。だが、落下点に左翼の重川がいた。難なく捕球。抜けていれば長打の大量失点で相手に流れが傾いていた。重川は「構えたコースも外寄り。浜風も頭に入れていた。直前にレフトに強いファウルで、寄っておいてよかった」と胸を張った。

島根大会後、主力に新型コロナウイルス陽性が続出した。欠席した3日の抽選会では、回復期間を見込んで初戦が第8日に組み込まれ、救済された。10日間の自宅安静でも選手は怠らない。グループLINEで有田工のYouTube映像を見た。波田も「センバツでプレーされた動画を全員で共有しました。気づいたことがあれば、何か書き込みました」と明かす。ピンチでも最善を尽くした。

波田は3回、中前に勝ち越し打を放った。同点の6回は4安打を集中して3点リードを奪った。9日以降のわずか2日間の練習で甲子園入り。万全でなくてもつなぐ野球が光った。家田康大監督(36)は「(練習は)あまり足りていない。足がつりかけた選手も出て予選になかったことが起きた。寛大な措置をとっていただき、生徒のうれしそうな顔を見られただけで幸せでした」と話した。伝統校が逆境に勝った。【酒井俊作】

◆今夏の甲子園大会コロナ関連措置 日本高野連は「49代表によって48試合を行う」ことを最優先に掲げ、集団感染となった4校の回復期間を考えて初戦を最も遅い日程に組み込み、全49代表校の試合を実現させた。また新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインを一部改定。試合開始の72時間以内に陰性と確認された部員なら誰でも、入れ替えによって出場可能になった。これで出場辞退を回避できる可能性を高めた。