専大松戸が6年ぶり5度目の優勝を果たした。

たった9球だったが、その力を見せつけるには十分だった。9回1死。3番手としてマウンドに上がった平野大地投手(3年)は、真っすぐを力を込めて投げ込んだ。初球は146キロ。2球目の148キロを右前打。2人目の打者へは4球目の148キロを中前へ運ばれた。1死一、二塁。いきなりのピンチにも動じない。続く打者へは自己最速タイの151キロで二ゴロに打ち取り、最後の打者は143キロで中飛に仕留めた。全9球、全て真っすぐで勝負した。

成果と課題の9球だった。今大会初のマウンド。「少し感覚が離れていたんですが、スピードの感覚も戻ってきたのかな、と思います」と、久しぶりのマウンドに手応えを口にした。

課題も手にした。持丸修一監督(75)は「平野はスピードは出る。でも回転とキレなんだ、ということを本人にわからせたかった」と、登板理由を明かした。「打たれてもいいから真っすぐを投げろ」と、送り出されたマウンド。低めに狙った球がいずれもヒットにされた。持丸監督は「今は高めの球にキレがあるから、空振りがとれる。それで勝負したらいいが、低めに投げようとして中途半端になってしまう」と、平野に反省を促し、試合直後にはボールを強く切る感覚を指導。平野は「もう1度夏に向けて、強さ、キレをつけていきたいです」と前を向いた。

実戦を通して、持っている力を試しながら、新たな課題を見いだしていく。「今日経験ができたのはプラスになる。関東大会を優勝して、夏の千葉大会に乗り込めるよう、チーム全員でやっていきたい」。エースの堂々たる投球で、専大松戸は21年以来の春季関東大会優勝へ、波に乗る。【保坂淑子】