「私学全盛」にもくさびを打つ、古豪「前商」に13年ぶりの夏が訪れた。前橋商は9回裏、敗退まであと1アウトから執念のドラマを演じた。まず2死二塁から、7回の代走から途中出場の高橋一輝外野手(2年)が同点の中前打。なお右前打と四球で満塁と攻め、2番斎藤隼(はやと)外野手(3年)が「このドキドキを楽しもう」と打席に向かった。3球目、前打席で三振した内角の直球を振り抜くと、サヨナラ打は右前で弾んだ。打った瞬間にベンチを飛び出したナインは、涙と笑顔でヒーローを迎えた。斎藤も「甲子園を夢見てた。本当にうれしい」と喜びをかみしめた。

「私立を倒すために前商に来た」というナインは、強豪私学を次々と撃破した。準々決勝の前橋育英戦は2点差を8回に逆転し、昨夏V樹徳との準決勝は圧勝。決勝も、99年夏甲子園優勝の桐生第一を9回逆転サヨナラで下した。春の県大会準々決勝の前橋育英戦は、終盤3点差を逆転負け。真藤允宗(まさむね)主将(3年)は「あの負けを忘れた日はない」と、その日からチームは猛練習を積んだ。住吉信篤監督(49)が「もう帰れ」と言うほどだった。リードされた最終回も、真藤が「全く負ける雰囲気はなかった」と言い切るほど、チームは自信を付けていた。

群馬で公立勢の夏出場は、12年の高崎商以来。住吉監督は「環境は私立に劣るかもしれない、でも野球に懸ける気持ちは私立に負けない」と目を細めた。真藤も「私立を倒すために2年半やってきて、それを達成できて良かったです」と笑顔。「MAESHO」の自信とプライドを胸に、夢の舞台でも“公立魂”を見せる。【黒須亮】

◆前橋商 1920年(大9)、前橋市立商業として設立された公立校。34年に現校名。生徒数は826人(うち女子は267人)、野球部は1920年に創部で部員数は78人。甲子園出場は春3度、夏は6度目。主な卒業生は漫画家のあだち充、巨人井上温大。所在地は前橋市南町4の35。中村清志校長。

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