鳥栖工-日大三を記者席から観戦して、日大三・安田虎汰郎投手(3年)のチェンジアップの良さがよくわかった。投手を背後から映すテレビ画面ではわからないボールの軌道が見える。私は捕手出身。習性として投球を受ける構図で見たい。

安田のチェンジアップには奥行きがある。私はとっさに「抜け感がある」と表現したのだが、この抜けた感じが打者を惑わす。真っすぐと同じく思い切り腕を振りながら、ボールが来ない。完成度は高い。具体的には、左打者の外角に逃げる軌道は予想通り。そして右打者の内角へも滑るように沈み込む。これは有効だ。

実は、私がプロ野球で経験した中で、右投手のチェンジアップの使い手はいなかった。それは左打者へは制御できても、右打者には死球を与える恐れが先行して、そこまで操れなかったと記憶している。高校野球を取材してまだ日も浅く、私が知らないだけと思うが、知る限りでは高校生で右投手のチェンジアップはあまり記憶にない。

これで真っすぐが145キロを超えれば、大学でも十分に通用するだろう。そして、中学や高校生の右腕は、こんな使い方もあると参考にしてほしい。しっかり操れれば、右腕にも大きな武器になる。

投手でこの大会で抜けてる存在は履正社の左腕・福田幸之介(3年)仙台育英の右腕・湯田統真(3年)だろう。福田は150キロの真っすぐと、鋭いスライダーがいい。150キロ左腕はそれだけで類いまれな存在。大阪大会で大阪桐蔭を退けた実力は、甲子園でも存分に発揮されるはずだ。湯田も快速球の持ち主。こちらはさらに下半身から粘ったフォームに進歩していくと、さらにベース板で強いボールになる。まだまだ下半身を使う余地は多分にある。

最後に、この大会では頭部付近への死球が少し多い気がする。むろん意図したものとはみじんも思ってはいないが、すっぽ抜けたボールが頭付近に行き「危ない」と言葉が出そうになる。少し強い言葉になるが、内角に真っすぐを要求し、すっぽ抜けて頭部付近に行ってしまうなら、捕手も内角に構えるのはリスクが高い。まだ技術が足りない。

勝負がかかった甲子園で死に物狂いのバッテリーの心情は分かるが、間違って与えたとしても、死球は首から下。決して首から上にボールが行ってはいけない。その自信がないのなら、まず投げきる技術を磨くこと。頭部死球はそれほど危険だとあらためて確認したい。(日刊スポーツ評論家)