熊本工が伝統校の威信を示し、3年ぶり23度目の夏の甲子園出場を決めた。背番号10の2年生右腕、山本凌雅が3戦連続の完投勝ち(1完封、2完投)。9回127球の熱投で11安打2失点。今春センバツ出場校の熊本国府打線をねじ伏せ、プロ注目のエースが負傷するチームの窮地を救った。
◇ ◇ ◇
狂喜乱舞の輪に、熊本工・山本は吸い込まれた。3年ぶりの熊本の頂点。23度目の優勝は県勢最多だ。右の人さし指を突き上げ絶叫した。「よっしゃー!」。
「優勝を味わえてすごくうれしい。まだ実感がない。でも、勝ててほんとうに良かった」
6-2で迎えた最終回。先頭に左前打で出塁を許すも、次打者を注文通りの二ゴロ併殺で2死を奪った。最後の打者は1ストライクから「コースもばっちり」。外角低めのスライダーで右邪飛に打ち取った。
気温34度。強い日差しが照りつける真夏のマウンドで127球の完投劇。準々決勝から1人で投げ抜き、5日間で計347球の力投だ。「火の国」熊本で、炎の鉄腕ぶりを発揮した。
「自分が勝つことが3年生への恩返し。先輩の思いを胸に刻んで投げました」
その先輩の1人がエース広永大道(だいち、3年)だった。最速146キロ直球を誇り、プロ注目右腕は今大会初戦で負傷。右の肋骨(ろっこつ)の疲労骨折で復帰時期は未定。大黒柱不在の危機を山本が救った。「信頼できる先輩。自分よりすごい3年生を甲子園に連れていけることがうれしい」。
連日の酷暑に貫いたことがある。「しんどそうな顔をしたらいけない」。中1日の決勝で疲労もあったが、気持ちを切らさなかった。11安打を浴びるも、要所で踏ん張った。自己最速タイの138キロを計測し、得意球のカットボールもさえた。ピンチも相手の応援歌を口ずさむ余裕で、第1シードの熊本国府をねじ伏せた。
“エース級”の働きに、田島圭介監督(43)は明言した。「1番をつけさせます」。甲子園から伝統校の背番号1を2年生右腕に託す。山本は「全国の強豪相手に勝てるように準備したい」。早くも新エースの自覚を胸に、聖地のマウンドを見据えた。【佐藤究】
各地区開催日程、組み合わせなど【高校野球 夏の地方大会2024】特設ページはこちら>>
○…9安打6得点と打線がつながった。0-0の初回。1番松永昂大内野手(3年)が三塁打で出塁。続く2番浦上雄宇(ゆう)内野手(2年)が右犠飛とわずか6球で先制した。1-0の3回1死二塁は浦上が適時三塁打を放ち、なおも1死三塁で3番上田遥斗外野手(3年)もタイムリー三塁打。試合序盤に3三塁打が飛び出すなど、相手の好投手を攻略した。田島監督は「古豪と呼ばれているが、全国で強豪に近づけるように」と力を込めた。100年以上の歴史を持つ伝統校が、8月1日に100周年を迎える聖地で躍動する。
◆山本凌雅(やまもと・りょうが)2007年(平19)8月2日生まれ、熊本県八代市出身。小4で野球を始め、八代七中では熊本東リトルシニアに所属。熊本工では1年夏に背番号11で初のベンチ入り。好きなプロ野球選手はカブス今永昇太。好きな食べ物はハヤシライス。175センチ、67キロ。右投げ右打ち。
◆熊本工 1898年(明31)創立の県立校。熊本県立工業学校などを経て1951年(昭26)から現校名。生徒数は1198人(女子303人)。野球部は1923年(大12)創部で部員数は105人。甲子園出場は春21度、夏は23度目で、最高成績は夏に3度の準優勝。主な卒業生は元巨人の川上哲治、元広島の前田智徳ら。所在地は熊本市中央区上京塚町5の1。野崎康司校長。
◆Vへの足跡◆
2回戦9-1八代
3回戦6-0必由館
準々決勝6-0有明
準決勝5-1九州学院
決勝6-2熊本国府

