帽子を深くかぶった霞ケ浦(茨城)・大石健斗外野手(2年)は、その場に手をついて静かに涙を流した。「甲子園で優勝してやるぞって気持ちで来て、1勝できてうれしいんですけど、一番は悔しい」。

思うように投げられない夏を乗り越えた。

2年生ながらクリーンアップを任され、この日は「5番左翼」で先発出場。1-6の最終回には、無死二、三塁で打席に。安打こそ出なかったが、三ゴロの間に三塁走者を本塁に迎え入れて1点を返した。守備では、安打性の打球を好捕してガッツポーズも見せた。

大石の本職は捕手だった。春先のスローイング練習中に右肩を負傷、インピンジメント症候群だった。思い切り投げる動作以外はこなせたため、勝負強い打力を買われて、外野手へコンバートされた。

県大会の打率は3割超えと打力では期待に応えた。一方守備では送球に不安を抱え「レフト前に飛んでくるな…レフト前に飛んでくるな…」と祈るほどだった。その分必死にフライアウトをもぎ取った。県大会決勝では、フェンスに激突しながら捕球するシーンがあった。「一瞬クラッとしたんですけど、スタンドからの『大石~』って声で目覚めました」と、うれしそうに話した。なんとか捕球しようと必死だった。「技術では捕れないので、気持ちで捕りにいこう」。フライアウトにかける思いは誰よりも強かった。

1回戦では智弁和歌山を延長11回タイブレークの末に5-4で破り、同校にとって記念すべき甲子園初勝利を飾った。歴史を刻む一員となって、「この経験を糧にしていかないと、先輩に失礼かなって。3年生が甲子園で1勝っていう景色を見せてくれたので。来年はもう1個先を目指したい」。新チームでは中心となって引っ張っていく。【佐瀬百合子】