<高校野球静岡大会:清水商4-3島田商>◇9日◇1回戦

 決着をつけたのは足をつりながら172球を投げ抜いたエースだった。延長11回に突入した開幕戦は、清水商・高山玄也投手(3年)の中前打で島田商にサヨナラ勝ちした。草薙球場の改修工事のため2年ぶりに118校が参加した開会式では、3連覇を狙う常葉学園橘を先頭に2350人の球児が入場行進し、27日の決勝戦まで続く甲子園ロードの幕を開けた。

 開会式直後の1万3000人の観衆が熱戦を見守った。3-3で迎えた延長11回裏2死二塁の場面で打席に入ったのは、172球を投げている高山だった。同じく先発の島田商・山田がストライクを取りにきた甘い直球を見逃さなかった。フラリと上がり、中前に落ちた打球を見届けると、勝利を確信した。「『打席を楽しめ』とみんなから言われて気が楽になれた。何も考えず、バットを振った」。今大会1番星の実感は、涙に変わっていた。

 サイドスローから繰り出された投球は、限界を超えていた。取って取られて迎えた8回、二塁前のゴロを捕りに行くと左ふくらはぎと股関節がつった。それでも直後の打者を三振に仕留めた。近藤靖監督(48)の「あそこで逆に力が抜けてよくなった」の言葉通り、9、10回と3者凡退に抑えた。「低めを意識」と、高山はペースを崩すことはなかった。

 一昨年秋まで内野の2番手だった。レギュラーを目指し外野に転向すると、メンバーから外れた。意気消沈しながら、中学時代に投手経験があったため、打撃投手としてマウンドに上がるとカーブがさえ渡った。見守った近藤監督から「投手をやってみろ」と言われ、アンダースローなどフォームを試行錯誤。最後はサイドに落ち着き、清商のエースを勝ち取った。「最後の夏に開幕戦という大舞台でやれることを感謝したい」とマウンドに上がっていた。

 1番星は1875グラムから始まった。予定日より1カ月以上早く生まれた未熟児だった。「元気に育って、原野のように大きくなってほしい」という思いを込めて「玄也」と名付けた母美可さん(46)は「仲間を信じて一生懸命投げていた」とわが子の成長に涙をこぼした。高山は「これだけで終わりたくない。この勢いで突っ走っていきたいです」。エースナンバーを背負う171センチ、62キロの背中には、生きざまが刻まれていた。【栗田成芳】