<高校野球埼玉大会:聖望学園4-0春日部共栄>◇27日◇準決勝◇県営大宮公園球場

 上からボールをたたきつけるように-。聖望学園・小島大輝内野手(3年)はそれだけを意識してバットを振り抜いた。1回表1死二、三塁。1ストライクから甘く入ったスライダーを鋭く打ち返した。打球は左中間を突き抜ける強烈な当たり。先制の2点適時打となり、チームに勢いをもたらした。「最後の夏なのでコンパクトな振りを心がけています」と会心の笑みを浮かべた。

 自分の打撃スタイルを変えてでも甲子園への切符を欲している。もともとは高校通算22本塁打のスラッガー。昨秋から12キロの減量を経て体の切れが増し、打球の飛距離が格段に伸びた。一気に長距離砲としての素質が開花し、半年で15本もの本塁打を量産した。その半面、フライアウトの数はチームトップクラス。春の県大会終了後、夏はアウトひとつが命運を左右するとコーチに諭され、チーム打撃に徹することを決意した。「変な色気は出さない。チームが勝つなら何でもする」。その姿は横浜時代にスラッガーとして鳴らし、今は巨人をチームプレーで引っ張る村田修一内野手(31)にダブって映る。

 “つなぎの4番”の秘訣(ひけつ)はグリップにある。指2本分、バットを短く持つことでスイングが安定。無駄なフライが減った。この日も1時間のトスバッティングで感覚を確かめてから試合に臨んだ。「遠くに飛ばすことを意識しないで打席に立つようにしている」。今大会、本塁打こそないが5打点をたたき出し、チャンスで確実に仕事が出来る打者に変身を遂げた。

 決勝で対戦する浦和学院は昨秋の県大会で敗れたライバル。「つなぐ野球で倒してみせます」と高らかに宣言した。ノーシードから頂点へ。夢舞台はもう目の前に見えている。【松田直樹】

 ◆小島大輝(こじま・だいき)1995年(平7)1月26日、埼玉・戸田市生まれ。小2で野球を始め、戸田東中では戸田東シニアに所属。ほぼすべてのポジションをこなした。中学ではバドミントン部で県大会出場の経験あり。家族は両親と妹。176センチ、80キロ。右投げ右打ち。