<高校野球静岡大会:常葉学園菊川8-2東海大翔洋>◇27日◇準決勝◇草薙球場

 常葉学園菊川が東海大翔洋を破り、5年ぶり3度目の春夏連続の甲子園出場に王手をかけた。2回に6番桑原樹内野手(2年)が高校通算4号となる先制2ラン。6回にも適時三塁打を放つなど2安打3打点の活躍で、4強に唯一残っていた中部勢を撃破。09年から続いていた同勢の優勝を阻止した。夏の決勝進出は準優勝に終わった10年以来、3年ぶりとなった。

 桑原の一振りが、試合の空気を一変させた。2回1死二塁、カウント1ボール1ストライクからの3球目だった。107キロのカーブをすくい上げた打球は右翼スタンドまで飛んだ。1回に3連続三振を喫していた東海大翔洋・中村駿之介投手(2年)の緩急を早々に攻略。センバツ1回戦で放ったバックスクリーンへの大会第1号をほうふつとさせる放物線ながら、桑原は「バットの根っこの方だったので、入ってびっくり」と、意外な一打だったことを明かした。

 だが、この意外性こそ桑原が目指すプレースタイルでもある。お手本がいる。J1磐田の日本代表MF山田大記(24)だ。子どもの頃から磐田ファンで、現在も時間があればヤマハスタジアムで観戦するほど。今月6日のC大阪戦での山田のプレーをテレビで見てしびれたという。FW前田遼一(31)の同点弾をアシストしたヒールパス。桑原は「ああいう意外性のあるプレーが好き」と笑顔で話す。

 5-2で迎えた6回にも持ち味を発揮した。1死二塁から打球は左中間へ飛んだが、一気に三塁を陥れた。「二塁で打球を見てギアチェンジした。山田さんでいうドリブルです」と、スピードの緩急をまねしての三塁打に胸を張った。この日は1~5番で3安打と湿りがちだった打線の中での2長打3打点。桑原の2安打でともに生還した主将の4番松木大輔捕手(3年)は「よく打ってくれた」と感謝した。

 春の県大会の4強中3校が準々決勝までで散った中、決勝まで残った第1シード。いよいよ、春夏連続での県制覇は2校だけ(65年東海大一と97年浜松工)というジンクスに挑む。桑原は「ベンチとスタンドも一体となって優勝したい」と語った。気合不足で春季大会を外されたことで成長した2年生は、意外、ではなく頼もしい言葉を発するようになった。【石原正二郎】