全国高校野球埼玉大会(7月9日開幕)の組み合わせ抽選会が24日、さいたま市内で行われた。昨秋準Vで33年ぶりの関東大会に出場した市川越のエース上條将希投手(3年)は、今大会注目の左腕。地元名物のウナギ料理でスタミナを養い、今春も4強入りした。優勝した浦和学院に0-1で惜敗したが、この夏は互いに勝ち進めば準決勝で対戦する。

 ウナギパワーで「戦国埼玉」の頂点を狙う。昨秋と今春と2季連続でベスト4入りした市川越。その原動力が左腕エースの上條だ。身長172センチと投手としては小柄だが、最速146キロを誇るオーバースローの本格派。スライダー、カーブなどの変化球を操り、要所で三振を奪う。

 昨秋の関東大会では初戦で横浜(神奈川)に敗れ、センバツ出場はならなかった。以降、上條が「このままではダメ」と取り組んできたのが、スタミナづくりのための食事だ。朝からどんぶりご飯を1杯から2杯に増やした。さらに新井清司監督(58)の勧めもあって、試合前日には必ず、ウナギのかば焼きを平らげている。

 地元・川越はウナギ料理が名物で、江戸時代から続く老舗の名店も多い。古くから滋養強壮の特効薬代わりに食べられており、豊富なタンパク質に、疲労回復のビタミンB1などが含まれる。ただ、近年の稚魚不足で価格が高騰し、ニホンウナギが国際的な絶滅危惧種に指定されたことでダブルパンチ。ますます家計の懐事情を直撃しそうな雲行きだが、上條は家族から「お金の問題じゃないです。甲子園に行ってくれれば安いモノです」と全面支援を受けている。

 エースは家族の思いを意気に感じながら、「最後の年は何としてでも甲子園に行く」と固い決意を口にした。この夏、精のつくウナギを食べまくって、前身の川越商以来となる25年ぶり2度目の甲子園に導くつもりだ。【浅見晶久】

 ◆上條将希(かみじょう・まさき)1996年(平8)6月27日、埼玉・ふじみ野市出身。小学3年から野球を始める。大井西中では軟式野球部に所属し、投手一筋。1年夏から抑えでベンチ入り。昨年末は県選抜チームに入りオーストラリア遠征を経験。172センチ、68キロ。左投げ左打ち。家族は両親と兄。

 ◆ニホンウナギ

 国際自然保護連合(IUCN)は今年6月、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定し、「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種」とレッドリストに掲載した。