<高校野球福岡大会:久留米学園3-2久留米商>◇14日◇3回戦◇久留米

 久留米学園が大金星を挙げた。春季九州大会にも出場し今大会もシード校の久留米商に競り勝った。背番号「3」の松下大樹投手(3年)が、9回2死一、二塁のピンチも最後の打者を中飛に打ち取った。「最後はしびれました。相手は打つ怖さがあったけど、気持ちで負けてはダメ。気持ちで抑えました。めっちゃうれしいです」。本来は3人で継投するチームだが、この日は松下が1人で投げきった。1年生の時、練習試合でめった打ちにあった相手に最後の夏、きっちりリベンジした。

 打っても松下がヒーローだ。8回、同点としてなお2死二、三塁。外角高めをしぶとく中前にはじき返した。投手としての挫折がこの日の決勝打につながった。昨年右肩、右肘を故障。右打席で肘を内側へ動かすと痛みが走った。しかし、外側へ動かすことはできた。西村昌彦監督(42)から「それなら左で打ってみれば」と助言され左打者に転向。すると右では1本も打てなかった本塁打が9本も飛び出すなど、いきなりクリーンアップになった。「今は打撃がすごく楽しい」。大好きな巨人高橋由伸のように、堂々とスイングする。

 グラブの内側には「親に感謝」と刺しゅうされている。「右肘痛で病院代かかったし」。スタンドにいた母佳代子さん(43)そして「彼女も来てました」と愛する人たちに、最高にかっこいい姿で恩返しした。

 今日、4回戦で筑紫中央に勝てば初の16強入りとなる。勢いに乗る久留米学園が、今大会の台風の目となりそうだ。【石橋隆雄】

 ◆松下大樹(まつした・だいき)1996年(平8)10月28日、福岡・久留米市生まれ。宮ノ陣小1年から軟式の「宮ノ陣フラワーズ」で野球を始める。宮ノ陣中では軟式野球部。久留米学園では1年夏からベンチ入り。右投げ左打ち。181センチ、64キロ。