<全国高校野球選手権:仙台育英6-4福井商>◇12日◇2回戦

 仙台育英(宮城)が6-4で福井商を下し、96年以来12年ぶりの3回戦進出を決めた。4-4と同点にされた直後の5回裏2死一、二塁から7番小川翔太左翼手(3年)が左中間に勝ち越し2点三塁打。チームは2戦連続2ケタの12安打に5犠打と、大技小技で攻めた。投げてもリリーフ左腕、木村謙吾投手(1年)が4回2/3を好救援し、同校夏通算20勝目に導いた。14日の第4試合で横浜(南神奈川)と対戦、94年以来14年ぶりの8強進出を狙う。14日は、青森山田も第2試合で慶応(北神奈川)と対戦。みちのくVS神奈川の激突となる。

 左翼へ強くなびく浜風を味方に、仙台育英打線が苦手といわれ続けた左腕を攻略した。左中間を破る決勝三塁打を放った小川は「走りながら抜けてくれと思った。風のおかげ」と笑った。先発に左打者7人を並べる打線が、相手左腕2投手に5回まで9安打を浴びせ6点を奪った。

 火付け役は、やはり主将の1番橋本到中堅手(3年)だった。1回、初戦から6打席連続安打となる左翼線二塁打。小川は「到がレフト線に打ったから、逆方向に打つ意識になった。あいつがやっていることが一番なので」と語る。

 主将の一打に、全員が同じ方向を向いた。送りバントの後、3番小野悠介内野手(3年)が左中間を破る適時二塁打。続く4番加藤大輔一塁手(3年)も左前適時打と逆方向に放った。小野と加藤は寮で相部屋。県大会で1割6分7厘と不調だった加藤は「県では(連続適時打は)なかった。(小野に)お前につなぐからかえせ、と言われてきた。この場でできて、すっごいうれしかった」と笑顔だ。

 左腕攻略がチームの課題だった。昨秋コールドで敗れた同県の宿敵東北のプロ注目左腕、萩野裕輔(3年)を倒さなければ甲子園はなかった。冬場もマシンで左投手のカーブに設定して打ち込んだ。ティー打撃でも「みんなで『萩野だぞ』と声を上げながら打った」と小野は振り返る。夏の県大会直前には、左腕投手のいるチームとの練習試合を多く組んだ。試合前日も、社会人のバイタルネットで外野手としてプレーした、左投げのOB白岩幸浩さん(26)に打撃投手を務めてもらった。

 甲子園で、その成果を確実に出した。2戦25安打で12年ぶりの16強だ。次戦は横浜。夏20勝を挙げた仙台育英だが、神奈川勢とは初対戦だ。佐々木順一朗監督(48)は「胸を借りるだけ。選手も横浜とやれてうれしいんじゃないかな」。相手エースは再び左腕だが「左の方が打てる」と加藤。過去2年、福井商に勝った早実(西東京)と佐賀北(佐賀)は頂点に立った。吉兆も味方に、横綱相手でも臆(おく)することはない。【清水智彦】