<高校野球東東京大会>◇15日◇3回戦

 来秋ドラフトの目玉右腕、帝京の伊藤拓郎投手(2年)が今夏初登板で7回参考記録ながら完全試合を達成した。墨田工相手に8-0(7回コールド)で勝利、76球を投げて11奪三振、内野ゴロ5、内野フライ3、外野フライ2の内容。最速148キロの直球は制球重視で142キロ止まりながら、宝刀スライダーを要所に決めて1人の走者も許さなかった。

 高校生の中に1人プロがいるような、鮮やかな奪三振ショーだ。伊藤は、相手を見下すように指先に力を込めた。1回、1番長谷川を外角直球で空を切らせると、6回1死からは4者連続三振。8番伊藤強に左打者のひざ下のスライダーを沈め、続く9番西村は外角スライダーで三振に打ち取った。「初戦だったので結構力は入れました」とはにかんだ。

 内外角にスライダーを散らし、カーブ、フォークをはさむ。最速は142キロだったが、わずか1時間18分で、7回参考ながら初の完全試合を達成した。7回のマウンドに向かう前、前田三夫監督(61)から「完全試合をやってこい」と、思い切り意識させられた。それでも2三振、三飛と危なげなく締める。会場の大田スタジアムは中3時に日本代表として台湾戦に登板した舞台。甲子園を夢見た少年時代の、淡い思い出にも後押しされた。

 昨夏の甲子園で1年生最速148キロをマークし、一躍時の人になった。だが、その後苦しんだ。今春センバツは準々決勝敗退。続く春季東京大会は初戦の3回戦(対国学院久我山)で3回途中KOされて敗れた。夏はノーシードからのスタートだった。

 何かを変える。硬かった股(こ)関節を柔らかくするため、自宅ではバランスボールを使用する。下半身を使い、より前でボールを離す感覚を追い求めた。土日の練習試合は連投し、平日は週1度100~150球の投球練習を行うようになった。フォームのバランスを固め、「スーパー2年生」として夏のマウンドに帰ってきた。

 今夏から、試合後は大リーガーも愛用するというハイテクアイシングマシン「GAME

 READY」を使用する。氷は一切使わず、ベルトを巻いて温度を0度に設定。前田監督が「聞いた事がない」という高校球界初?

 の逸品で圧力をかけながらヒジをケア。メジャー挑戦を夢見る右腕に、メジャー級の「助っ人」まで現れた。【前田祐輔】