<高校野球福岡大会>◇20日◇準々決勝

 東海大五が延長10回サヨナラの6-5で戸畑を破り、4強一番乗りを果たした。

 劇的に28年ぶりの4強を決めた。延長10回表、戸畑に1点を勝ち越されて迎えた最後の攻撃も2死二、三塁。打席に立ったのは、背番号1の左翼手、寺岡寛治(3年)だ。「それまでカーブでやられていたんで狙ってました」。高めのカーブを狙い打った打球は中堅手の頭を越え同点、サヨナラの走者がホームを駆け抜ける。抱き合い、雄たけびを上げる歓喜の中心に寺岡がいた。

 投げられないエースだ。2月に右ひじに違和感が発生。エックス線、MRI検査でも分からなかった「疲労骨折」が、CT検査で判明したのが6月10日。今夏の初戦(9日)で9回にリリーフ登板したが、最初の1球を強く投げたときにまた痛みを感じた。「こういう運命。野手で頑張っていこう」と決めた。プロ注目の最速149キロ右腕。投げたい気持ちをグッと抑え、打者に専念してきた。「まさか打ってくれるとは…」。寺岡の葛藤(かっとう)を知る西村正己監督(33)の目はたまらず潤んだ。【実藤健一】