<高校野球岩手大会>◇26日◇決勝

 一関学院が、8年ぶり6度目の甲子園切符をつかみ取った。春夏連続出場を狙った盛岡大付を猛打で圧倒、8-2で下した。3回表に宮本涼主将(3年)の左前適時打で2点を先制すると、6回には5連打で4点を奪取。15安打と打線がつながったチームは、3年生9人を中心に団結力で勝ち上がった。

 昨夏は初戦で姿を消した一関学院が頂点に立った。最後の打者のバットが空を切ると、ナインはマウンドへ駆けだす。人さし指を天高く突き上げ、最強をアピール。今年は甲子園へ続く、県内で一番長い夏を勝ち取った。スタンドから投げ込まれた紙テープの合間から、選手の笑顔がはじけた。

 最後の夏に懸ける3年生が意地をみせた。3回表1死から9番・菅原瑛真(えいま)一塁手は間一髪セーフの内野安打、1番・荒木俊樹左翼手が左前へのテキサス安打でつなぐ。2死後、宮本が左前にはじき返す。どれもクリーンヒットではない。気持ちで奪った2点だった。

 部員79人の中で最上級生は9人だけだが、結束力は強い。7月上旬、自宅から通学する宮本らが、ほかの選手同様に寮生活を始めた。「仲良しは一緒にいた方がいい」。沼田監督の判断だった。榎本大輝中堅手(3年)が夜中こっそり素振りをしようと広間へ行くと、8人がそろっていたことがあった。「気付いたら9人いる」。心のつながりを感じた。

 強い「きずな」で栄冠をつかんだ。6回表1死から、佐藤大輝右翼手(2年)の内野安打を皮切りに5連打。快音が続く度にベンチ、スタンドの熱気が増す。大声援に塁上の選手たちはド派手なガッツポーズで応えた。つながったナインの胸には「4つ葉のクローバー」入りの首飾りが光っていた。

 「困難に打ち勝ち、幸運をつかんで欲しい」という願いが詰まった、おそろいお守りだった。蛇口由将(3年)の母幸子さん(48)からの贈り物だ。幸子さんは春先から暇を探しては野原でクローバーを探し回った。しかし大会開幕に全員分が間に合わず、初戦(17日)は3年生だけが身に着けていた。順当に勝ち進み、準決勝(対盛岡一)でメンバー全員に渡った。すでにクローバーは汗が染み込み、枯れている。「それだけ勝ってきた」(榎本)の言葉通り「幸運を呼ぶ草」が快進撃を物語っていた。

 初戦(対一戸)は5安打と苦戦したが準決勝で12安打、この日が15安打と「強打」のイメージが浸透してきた。宮本は「甲子園でも打って勝つ」と堂々の宣言。8年ぶりの夏は快音で彩ってみせるつもりだ。【湯浅知彦】