広島新井貴浩内野手(41)が意地の1発を放った。「日本生命セ・パ交流戦」オリックス戦の5回、チーム初安打となる2号ソロを右翼ポール際に運んだ。打線が技巧派左腕アルバースに封じられ、15年から続いていた同カードの連勝は9でストップしたが、この日も多くのカープファンが訪れた大阪のスタンドを、大ベテランが沸かせた。 

 これぞベテランの技だった。新井は難しい外角球を見事にスタンドイン。高い飛球はファウルゾーンに切れそうで切れず、そのままポール際に飛び込んだ。一瞬の静寂が解け、赤いユニホームのファンから、歓声が一気に響き渡った。

 「打ったのはツーシーム気味のストレート。球持ちがいいので、タイミングを合わせづらかった。とらえたと思っても、少し差されたりね。数字も示しているようにいい投手。バッティングカウント(3-1)だったけど、強引にならないように注意していた」

 5回2死からの2号ソロ。それまで打線が初対戦のアルバースに1人も走者を出せなかった。そんな中、新井は球を引きつけて流し打った。結局この1本を含めて今季最少タイ2安打のみ。今季チーム最短2時間27分で淡々と試合が終わった。緒方監督も「最後まで打線がタイミングを合わせられなかったね」と悔しがった。それだけに、新井の存在感が際立った。

 助け合いの精神を強調する。チームは先の楽天3連戦に3連勝。交流戦に白星先行したが、それまでいまひとつ波に乗れていなかった。特に先発投手陣が崩れるケースが目立った。そんな時に、大ベテランは仲間を鼓舞していた。

 「長丁場はいろいろある。投手と野手は持ちつ持たれつ。今は投手が少し苦しい。なおさら野手が点を取ってあげようと思わないと。投手に助けられる試合もいっぱいある。それがチーム一丸ということ」

 DH制のパ・リーグ本拠地6連戦を前に緒方監督に「右、左に関係ない」と“切り札”に指名された。そして3試合ぶりのスタメン出場に奮起。5月23日巨人戦以来、3週間ぶりアーチは惜しくも白星に結びつかなかった。チームの連勝は3でストップ。交流戦は再び勝率5割となった。

 「今日は終わった。しっかりまた反省するところは反省して、準備していきたい」。後輩に打席で手本を示した41歳。経験豊富なその背中は、まだまだ頼もしい限りだ。【大池和幸】