ソフトバンクを支える人々にスポットを当て、随時掲載する「支えタカとよ」。第6回は球団OBで現在は球団職員として子どもたちに野球を教えている新垣渚氏(38)です。

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 北九州市民球場から道路を挟み向かいにあるグラウンドで、新垣氏は子どもたちを相手に軟式ボールを投げ込んでいた。「ほら、しっかりボールを見て!」。優しくアドバイスし、190センチの長身から次々とゆっくり打ちやすい球を投げる。その投球フォームは現役時代と変わらない。小学3~6年生を対象とした「ホークスジュニア ベースボールスクール」で週3回、講師を務めている。「僕も小学、中学は軟式でしたからね」と笑う。

 さらに、それとは別に週2回は各地の小学校をまわっている。小学2年生に体育の授業時間を借り、野球を教える。「昨年までは3年生が対象だったんですけど、今年から2年生にしました。2年生だと野球をした経験がない子がほとんど。グラブのはめ方も分からないし、右で投げるのか左で投げるのかも分からない」と笑う。

 緑色の柔らかいゴムボールを使い、男女全員に投げ方、ゴロ、飛球の捕り方を教え、最後に試合形式を行う。「楽しもうということだけですね。楽しくないと続かない。野球の原点を教えるので」と話す。「失敗してもいいよ」。「恐れないで。何回失敗してもいいから」と、何度も挑戦させる。現役時代、1試合5暴投の日本記録を作った。通算101暴投は史上3番目に多い。それでも、失敗を恐れず腕を振り続けた新垣氏のスタイルそのままだ。

 6月には沖縄へ出張。自身の出身、泊小学校でも初めて教えた。所属していた「泊メッツ」の子どもたちにも教え、「沖縄はレベルが高いな」とうれしい思いもした。九州、沖縄と活動の場所もどんどん広がっている。

 松坂世代として甲子園を沸かせた右腕は、少しずつだが、確実に野球を普及させている。「野球人口が減ってきている。増やしていきたい。まずは自由にやらせたい」と、型にはめず指導する。「今は楽しいですよ。でも、またユニホームを着てみたい思いもあります」と、将来のプロでの指導者への思いもある。「(今は)頭を柔らかくして対応しないと。大人の顔で接するとダメ。子どもたちは敏感だから」。子どもたちと同じ笑顔で、同じ目線で新垣氏は野球を楽しんでいる。【石橋隆雄】

 ◆新垣渚(あらかき・なぎさ)1980年(昭55)5月9日、沖縄・那覇市生まれ。沖縄水産、九州共立大を経て、02年ドラフト自由獲得枠でダイエー(現ソフトバンク)入団。04年から3年連続2桁勝利を挙げるなど先発で活躍。14年シーズン途中、ヤクルトに移籍。16年現役を引退。通算172試合、64勝64敗。家族は夫人と2女。17年1月からソフトバンクの事業統括本部 興行開発本部 スポーツ振興部で働く。