待望の鯉キラー誕生だ。阪神先発の西勇輝投手(28)が、アクシデントをはね除けて6回4安打1失点。強力カープ打線を封じて5勝目を挙げた。

初回1死から菊池涼に左翼越えのソロアーチを浴びたが、2回以降はテンポのいい投球でゼロ行進。

「連敗しないことだけを考えてマウンドに上がりました」。チームの勝利を最優先に腕を振った。

阪神ベンチが騒然となったのは、3回無死一塁で西川を右飛に打ち取った直後だ。「(左足が)止まって動かなくなって曲がった」。踏み込んだ左足首を痛めてしゃがみ込むと、トレーナーがマウンドに駆けつけた。数分間の治療と応急処置を終えると、何事もなかったかのように再びマウンドへ。捻挫にも降板することなくボールを投げ続けた。

最後まで強気だった。1点リードの6回には、味方の失策から先頭安部の出塁を許し、2死一、三塁のピンチを迎えたが、4番鈴木を外角ツーシームで三ゴロ。7回の打席で交代した。矢野監督は「アクシデントもありながら、あそこまで投げてくれたのが1番。西の頑張りだと思う」と絶賛。これで今季の広島戦は移籍初勝利も含め、4試合で2勝1敗、防御率1・50。特に主砲の鈴木は14打席ノーヒットと完璧に抑えている。

若きリーダーとして投手陣を支える。若手投手とも積極的にコミュニケーションを図り、悩みにも耳を傾ける。7月30日中日戦でプロ初勝利を挙げた浜地には、欲しがっていたスーツケースをプレゼント。後輩の節目を祝った。チームにとって先発に白星が付いたのは西が勝った7月21日ヤクルト戦以来。厳しい戦いが続くが、「しっかり明日につながれば」と最後に口にしたのもチームを思ってこそ。頼れる男が真夏の逆襲をけん引する。【桝井聡】