照明がない。太陽もない。打球も、ない。西武森友哉捕手(24)が8回先頭の打席、初球を振り抜いた。打球はバックスクリーンへ一直線に向かった…はずだ。しかし日本ハムの中堅西川が動かない。いや、動けなかった。打った瞬間打球を見失い、消えた魔球はバックスクリーン右へ着弾。静まりかえる釧路市民球場のダイヤモンドを森が1周した直後、日没コールドで勝利が決まった。

午後1時から始まったデーゲーム。乱打戦で長引き、回を追うごとに太陽は沈んでいった。加えて途中から降り出した雨。照明がない地方球場とあって、イニング間には審判団から「やるよー!」と攻守交代を促された。バックネット裏の室内灯は、グラウンド内に反射して見えにくいためすべて消灯。協議を繰り返し、決め手となった暗闇弾だった。打った森は「(打席から)見えないことはない。見えずらかったけど。ホームランがなくならないと聞いてよかった」。自己最多更新の18号は、消えなかった。

直前の7回の守備では、暗さを生かした配球で攻めた。マウンドには前日、球団最速タイの158キロをマークした19歳平良だった。森は「暗さは高校の時なら普通。でもプロでは初めて。打者は見えずらいと思ったので、真っすぐ中心に組み立てた。一生懸命捕ろうと思いました」。17球のうち変化球は2球。剛速球を受け止めた。

辻監督も「暗いから160キロくらいに見えたんじゃないかな。(日没コールドは)記憶にない。勝てたことを良しとしましょう」。試合のなかった首位ソフトバンクと2・5ゲーム差。30日からの直接対決に向け、消えていたタカの背中がクッキリと見えてきた。【栗田成芳】