日本ハム栗山英樹監督(60)が16日、暴力問題の渦中にある中田翔内野手(32)へ、他球団への移籍や放出も選択肢の1つとの持論を明かした。

神戸市内で騒動後、初めて取材に応じ「正直、このチームでは難しいかなっていうのは思っていて」と放出の可能性を示唆。中田への親心を抱きながら、今後もプロ野球選手としての復帰の道を模索していく。

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栗山監督は、迷いなく言い切った。暴力問題で揺れる中田に対し「ファイターズで今すぐ『さあ(復帰に向けて)行きますよ』っていう感じのことではない。それぐらい重く受け止めている。ただ、なんとなく自分で感じているのは正直、このチームでは難しいかなっていうのは思っていて」と、他球団への放出も辞さない考えを示した。

背景には、揺るがない親心がある。中田は今月4日、同僚への暴力行為で無期限の出場停止処分を受けた。栗山監督は電話越しに「しっかりと長い間、電話で話し込んだ」と明かし「次のステップを踏むためには、ちゃんとみんなに謝って、言われることも受け止めて、我慢して、前に進むしかないんだとしっかり伝えた」。才能ある中田の野球人生を途絶えさせてはいけないという思いから「放出」の可能性を挙げた。

事態の重さは、切々と感じている。「オレとしては一生懸命(中田を)前に進めてきて、向き合ってきたつもりなんだけど、この結果は『つもり』でしかなくて。結果が出なければ、やったことにはならないので、オレも本当に責任を感じている」と眉間にしわを寄せた。「何とか、何とか、何とかもう1回、再生するチャンスをもらった中で野球をやらせてやりたいっていう思いはオレの中にあるから」と信じている。

栗山監督 世の中の人はそんなの甘いだろって、野球やめさせろよって、もちろんそういう意見が出てくるのも分かる。それも分かる。オレも分かっている。ただ人は、やっぱり失敗したりとか間違いも起こしたりする時に、まず謝って許されるのであれば、またもう1回やり直すチャンスっていうのは、どこの社会でも考えてあげるべきだと思っていて、というだけの話なので。

今季のトレード期限は8月31日までで、それまでに成立しなければ、トレードの可能性はシーズンオフとなる。監督就任から10年、ともに歩んできた主砲の野球人生を案じながら、矢面に立って導き出した選択肢の1つ。今後もプロ野球選手としての復帰の道を、一緒に模索していく。【田中彩友美】

◆日本ハム中田の暴力行為 4日に北海道函館市で行われたエキシビションマッチDeNA戦の試合前に、同僚選手1人に暴力行為を行った。中田は被害を受けた選手とベンチ裏で話していたところ、突発的に腹を立てて手を出した。偶然居合わせた選手が止めて、その場は収まったが、被害に遭った選手から球団に申し出があり、判明。事実確認が行われている間に試合が始まり、「4番一塁」でスタメン出場した中田は1回に先制適時打を放ったが、その回限りで途中交代。球団から球場からも退場させられ、自宅謹慎を命じられた。その後、詳細調査を行った球団は11日に、中田に対して統一選手契約書第17条(模範行為)違反による出場停止処分を科した。

◆中田が公示されている出場停止選手とは

野球協約 第60条(処分選手と記載名簿)選手がこの協約、あるいは統一契約書の条項に違反し、コミッショナーあるいは球団により、処分を受けた場合は、以下の4種類の名簿のいずれかに記載され、いかなる球団においてもプレーできない。

(1)出場停止選手と出場停止選手名簿(サスペンデッド・リスト)

球団、あるいはコミッショナー、又はその両者は、その球団の支配下選手に対し、不品行、野球規則及びセントラル野球連盟、パシフィック野球連盟それぞれのアグリーメント違反を理由として、適当な金額の罰金、又は適当な期間の出場停止、若しくはその双方を科すことができる。球団、あるいはコミッショナー、又はその両者によって出場停止処分を科された選手は、コミッショナーにより出場停止選手として公示され、出場停止選手名簿に記載される。出場停止選手は、出場停止期間の終了とともに復帰するものとする。(後略)