続くのか、それとも途切れるのか。先週、近本の連続試合安打のことに触れたが、楽しみは、まだ続くことになった。

積み重ねたのは29試合。7月3日の中日戦でヒットを放ち、日本記録にあと4試合に近づいた。いまの近本の打席を見ると、本当に自信に満ちあふれている。構えてから、振り抜くまで、ブレがない。特にバックスイングに入った時の形に、僕は見とれている。打ちそう、打てそう。そういう空気が充満している。この形が長期間、続いているのだから恐れ入る。

記録のスタートは5月28日。ここから1カ月以上が経過した。好不調の波が必ず訪れるバットマンのサイクル。好調期は長くて「1カ月から1カ月半といったところ」と、過去の名バッターから聞いたことがある。近本はまさにこの絶好波の上に乗っている、ということなのだろう。

さあ、今週は新記録達成ウイークになる。正念場の相手は広島、ヤクルト。難敵が相手で、近本、どうする? 日本記録の「高橋慶彦超え」は順調に進んで、8日がタイ、9日の神宮がニューレコード誕生の場となる。1979年から43年、新たな歴史を刻む瞬間をぜひ見てみたいものだ。

ということで近本同様、チームも今週が意味ある戦いになる。上をいくチームと戦う9試合。広島、ヤクルト、そして巨人と続く3カード。ここで大きく負け越すようなことがあれば、後半戦に向けての興味が薄れていく。そこまで重要な3カードといえる。

時は流れて7月。阪神は開幕から80試合を消化した。気がつけば残りは半分を過ぎ、63試合しかない。もう63試合なのか、まだ63試合もある、なのか。どう捉えるかによるけど、とにかく早く勝率5割にもっていくこと。これをチームの目の前の目標にしてもらいたい。

というのも、やはり勝率5割こそがクライマックスシリーズ進出の絶対条件だと思っているからだ。3位までに入れば、変則だが日本一になれるチャンスがある。でも3位に入れば無条件に進出…なのだが、5割に届かない進出は、本当に気恥ずかしいものになる。

現在、阪神の借金は「6」。机上の計算になるけど、2勝1敗ペースでいけば返済には6カードが必要で、うまくいけば7月中に完済となる。そのためにも上位の3チームが待つ今週、そして来週がカギになる。ここで負け越すようなことでは、借金が2ケタになる危険性があり、正直、CS進出が薄らいでいく。

すでにヤクルトには史上最速で優勝へのマジックナンバーが点灯した。僕は1985年、2003年、2005年の阪神のリーグ優勝を取材しているが、7月初めにマジックとは驚きしかない。ヤクルトが強いのはわかっている。それとともに他球団のだらしなさを認めるしかない。思い返せば今シーズン、「あの試合」がなければ、ヤクルトのここまでの勢いは生まれていなかった。開幕戦の阪神は、大量リードを守れず、逆転負けを喫した。あれでヤクルトは自信を深めた。逆に阪神はすべてが狂った。開幕9連敗…、悪夢のキッカケはすべてあの敗戦だったと感じる。

もちろん逆転Vをあきらめたわけではないけど、現実問題として、厳しい。となればヤクルトに阪神の意地を示せるのはCSに出て、そこでヤクルトをやっつけることしかない。

そのための条件は上をいく巨人、広島のどちらかを蹴落とし(2チームともでもいい)、そこに勝率5割を越し、貯金を持ってCSに挑む。やはりCSに出るのに負け越しチームはダメだ。もちろんそういう規定はないのだが、胸を張って…には、やはりならない。

現状2位の巨人との差は「3・5ゲーム」。3位の広島とは「2ゲーム差」である。ヤクルトは遠い存在だが、2位までは射程圏。1強5弱といわれても、まずは目の上にいるチームを早くマクることだ。今週、来週で一気にAクラス入りは十分にある。

近本に注目が集まるが、チームとしても7月の正念場。しっかりと見守りたいと思っている。(敬称略)【内匠宏幸】 (ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)