再浮上へ大きな1勝だ。阪神藤浪晋太郎投手(28)が巨人打線を7回1失点に抑え、先発では491日ぶりの勝利を飾った。2試合連続で無四球と制球も安定し、宿敵相手に6年ぶり白星。球団初の6カード連続勝ち越し&シーズン勝ち越しに貢献した。チームは3連勝で、勢いを取り戻した。

先発星は実に491日ぶりだ。藤浪は照れくさそうに目尻を緩ませた。

「やっぱりいいですね。先発で勝つのが一番心地よい。とにかく1つ勝ちがついて良かったです」

7回1失点で433日ぶりの白星。先発で2戦連続無四死球は13年6月以来9年ぶりだ。巨人の長嶋茂雄終身名誉監督も見守る中、16年4月5日以来2328日ぶりのG倒星。「伝統の一戦」での自身の連敗を7で止め、「久しぶりに勝ちがつくかつかないかでは全然違う」と納得した。

「このまま投げ続けたら、ホンマにつぶれてしまうんちゃうかな…」

人知れず恐怖を覚えたのは20年秋、初めて中継ぎに配置転換された頃だった。自身最速162キロを計測し、周囲を熱狂させていた時期。本人だけはひそかに危険信号を察知していた。

「アドレナリンが出すぎて、振り切っちゃいけないところまで腕を振り切ってしまっている。越えたらいけない一線を越えてしまっている。この状態を1年間続けたら、あと数年で野球ができなくなるかも…」

それは選手生命の危機さえも予感させるほどの感覚だったという。

当時は無失点でバトンをつなぐと、必ずと言っていいほど安堵(あんど)の白い歯をこぼしていた。

「人の勝ち星とか勝利打点を背負って投げる場面はそれだけ気持ちが入る。だから一瞬で体のたがが外れてしまうのでしょうね」

極限を経験したことで、藤浪はまた1つステージを上がれたのかもしれない。

「エゴ」と表現してまで先発一本にこだわった22年。道のりはまたも険しかった。新型コロナウイルス感染に中継ぎ再転向、長引いた2軍暮らし…。好投が報われない試合も目立った。開幕投手では球団最遅のシーズン初勝利。それでも「いいモチベーションでやれていた」と即答できる心の強さが、今は頼もしい。

元気に投げられる喜びを、勝利に懸ける皆の苦心を、28歳はもう人一倍知っている。だから今季初勝利の直後も責任感が口をつく。

「今日1日だけ余韻に浸って、明日からは切り替えて来週に備えられたら」

チームは2年連続の巨人戦勝ち越しを決めた。宿敵に6カード連続勝ち越しは球団初の快挙だ。しかも、けん引役は誰もが復活を待ちわびた大器。虎はまだファイティングポーズを崩していない。【佐井陽介】

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