広島益田武尚投手(27)が“今秋も”高い評価を受けている。23年の1年目春季キャンプからブルペンでは高い評価を受けていた速球派右腕だ。腕を下げた24年以降も、ブルペンでは周囲が認める球を投じていた。だが、今季までの3年間で通算22試合の登板にとどまっている。ただ、今秋の評価はブルペン投球にとどまらない。15日に行われたロッテ戦では1回を1安打無失点に抑え、対外試合は10月のフェニックス・リーグ初登板から10試合(8回)連続無失点に伸ばした。
きっかけはツーシームの球質向上にある。これまでの益田は150キロ超のフォーシームで押しながら抑えていくスタイルにこだわった。指にしっかりかかった球、打者が差し込まれた姿を求めた。そんな思いが投球を窮屈にしていた。
「三振を取らないといけないと考えていた時期もあった。思い切り腕を振って真っすぐでファウルを取って、最後は空振りを取って三振を奪わないと1軍に上がれないという思考になっていた。こうしないといけない。こう抑えないといけないが強すぎた」
1年目のオープン戦で無失点を続けながら開幕1軍を逃した経験が、起因となった。「厳しい世界だなと。今の自分のままでは1軍では通用しないんだと。ストライク率を指摘されることもあり、どんどん自信がなくなっていった。無失点に抑えるだけでは意味がないと内容でも完璧を求めるようになった」。無失点に抑えても捉えられた球を悔い、併殺に打ち取っても前の打者を出した反省だけが強く残った。いつからか自分を信じ切れなくなり、マウンドでも自分を疑うようになった。
1軍に同行した今季最終盤、藤井ヘッドと意見を交わす中でツーシームの可能性を見いだされた。「これまでは右打者の内角にきっちり投げ切れないと見た目が良くないし、打ち取れないと思い込んでいた。だから(意識して)曲げようとして体も開いていた」。考え方を変えた。四隅に投げようとしすぎるのではなく、真っすぐの軌道で打者の手元で変化させることで打ち損じを誘うことだけ考えた。力で押すのではなく、打ち損じを誘う。自分主体ではなく、打者の視点で投球を考えるようにした。フェニックス・リーグではフォーシームはほとんど投げず、ツーシーム中心の組み立てで好結果を残した。データもリーグ屈指の数値をたたき出しているという。
何より、ツーシームを軸にすることで“こうしないといけない”がなくなったことが大きな収穫だった。
「理想はパワーピッチャーだけど、それで3年間通用していない。せっかく腕を下げたのに、自分の理想ばかりを追い求めても損をするだけ。自分がこの世界で生きる道をと考えたら、ゴロアウトを増やして、ゲッツーを取って、ピンチの場面で行ける投手になるんだと、吹っ切れました」
益田は今、グラウンドボールピッチャーへ生まれ変わろうとしている。結果を積み重ねることで「ツーシームというものに対して、打者に投げる感覚が分かってきた。そこは自信を持っていいかな」と精神面の変化もみられる。
プロ野球界では、ブルペンでの投球では目を見張る球を投げられるにもかかわらず、試合ではその力を発揮できない投手のことを「ブルペンエース」と呼ぶことがある。益田はこの秋、ツーシームという新たな武器を手に「ブルペンエース」からの脱却を誓っている。【広島担当 前原淳】



