西武中島裕之内野手(28)が30日、今オフにポスティングシステム(入札制度)によるメジャー移籍を、断念していない意向を明かした。前日29日に球団側が来季の残留を発表したことに「何にも納得していない」と反論。球団には、昨年オフの契約更改交渉から訴え続けて好感触を得ていただけに、報道を通して一方的に出された形の結論に不満を爆発させた。今後も継続して交渉を求めていく考えを示した。

 ずっと我慢してきた思いが、あふれて止まらない。西武第2球場で秋季練習を終えた中島が、今オフのメジャー挑戦について口を開いた。「球団、ファンのこともあるし、口に出したらあかんと思っていたけど、ずっと夢だったし、今年行かせてほしいと思ってます」。タイムリミットが迫り、胸の内を初めて公の場で告白した。

 水面下で話し合ってきた球団との食い違いを、説明せずにはいられない状況になった。前日29日に前田球団本部長が、中島の来季残留を発表した。「本人も納得している」と説明したが、中島は反論した。28日に前田本部長と会談して慰留され「何も考えられないので、今日は帰ります」と態度を保留したことを明かし、その翌日に残留発表されたことについて「何にも納得していない」と不満を爆発させた。

 前日29日、前田球団本部長は「(メジャー希望を)正式に聞いたのは(28日が)初めて」と発言した。しかし中島の認識は違った。

 中島

 (昨年オフの契約更改は)ほとんどポスティングの話だった。

 今シーズン中も継続して希望を伝え、夢の実現へ動いていた。CSで敗退した10月10日には、小林球団社長から「本人の意思や夢には最大限配慮したい」と前向きな発言があった。

 中島

 行かせてもらえると思ったので、気持ちの整理ができていません。球団から「いいようにする」「任せてくれ」と言われて、信じてた。だからマスコミにも言わなかった。自分は何も話してないのに、勝手に(残留が)決まった感じになって。将来を(球団の一方的な発表という)嫌な形で出されたなと思う。

 もちろん、ポスティング移籍は球団の了承ありきと理解している。海外FA権の取得は早くて2年後。現在28歳という年齢も考え、体が最も動くうちにメジャー挑戦したいと粘り強く説得にあたった。「FAじゃないから自分で決められないけど、もっと話し合いたい。オーナーとも話したいです」と今後も交渉を求めていく考えは変わらない。

 選手会長という立場もあり、個人的な発言は控えてきた。正直に、静かに進めてきたはずの交渉を一方的に打ち切られた形。温厚な男が、これほど感情を表に出すのは異例のことだ。球団のトーンダウン、交渉過程における不信感。「ごねるつもりはない」と話す表情は、怒りというより悲しみの色が濃い。

 [2010年10月31日8時58分

 紙面から]ソーシャルブックマーク