<2014SUZUKI日米野球:日本代表4-0MLB>◇第3戦◇15日◇東京ドーム

 岩隈、田中をメジャーに送り出した球団の現エースが、衝撃的な代表デビューを飾った。

 侍ジャパンの則本昂大投手(23=楽天)が「2014

 SUZUKI

 日米野球」の第3戦に先発。自己最速155キロの直球を武器に1人の走者も許さないパーフェクト投球で5回を無失点に抑えた。日本投手による「5回完全投球」は日米野球史上初めて。西野らリリーフ陣も力投し、こちらも史上初の「ノーヒットノーランリレー」で完勝した。

 3連勝の侍ジャパンは、24年ぶりのシリーズ勝ち越しも決め、早々と賞金5000万円も手中にした。

 下半身をたっぷり粘らせた。ため込んだ力をWBC球に注いだ。「人生最高だった」と認めた則本の60球に、日本が誇る投手力が凝縮されていた。1回。「もちろん一番対戦したかった」MLBの顔、カノへの4球。名刺代わりには十分すぎた。

 的確に制球された外角直球で2ストライク。解説の松井秀喜氏が「外角のコントロールが非常にいい」とうなる。ここで6年連続3割の強打者が、打席を外した。明らかに嫌がる猛者に攻め手を緩めない。ストレートを一転、内角に振った。窮屈なファウル。仕上げはストライクゾーンから落とすフォークボールだった。「室内球場で汗も出て、適度に(指とボールが)湿った状態。WBC球の感触は良かった」と、日本人らしい繊細な感覚も味方につけた。自分の土俵で空振り三振とし「楽しかった」。カノはムスッとガムを膨らませた。

 ロンゴリアは153キロのつり球、回をまたいでモーノーはスライダー。KKKで上位打線の出ばなをくじき、もうひとヤマが待っていた。「同世代。どれくらい通用するか。真っすぐでいってやろう」と待ちこがれていたキューバの怪物、プイグだ。初球。外角は自己ベストの155キロを刻んだ。「直球で空振りが取れ、変化球もある程度は。いけるところまで」とエンジンをふかし、5回を打者15人で終え、同学年の西に渡した。

 岩隈、田中、則本。楽天に流れる本格右腕の潮流を継ぐ男が先頭に立って、長い日米野球で初めてとなるノーヒットノーランの扉を開けた。偉大な先輩2人は海を渡った。「僕はプロで2年しかやってない。まだまだ下っ端。(メジャーは)実績を残してからの話。イーグルスは6位だった。受け止めて、ゼロからやっていくつもり」と、ミックスゾーンでも日本人らしく謙虚を通した。丁寧な受け答えの後ろを、屈強なメジャーリーガーたちが通る。リスペクトを込め、若き侍をどつき、降参の笑顔で引き揚げた。【宮下敬至】

 ◆MLBファレル監督が完敗を認めた。5回を完全に抑え込まれた先発則本について「非常に効果的な投球だった。力のある直球に手元で落ちるフォーク。あれだけ低めに集められると攻略は難しい。完全に脱帽した試合だった」と白旗を上げた。

 ▼先発の則本が5回をパーフェクト。秋季開催の日米野球で日本の先発投手が5回以上を無安打に抑えたのは、タイガースと対戦した62年第16戦村山(阪神)の7回2/3、カージナルスと対戦した68年第8戦江夏(阪神)の5回1/3、全米と対戦した00年第6戦高橋尚(巨人)の5回に次いで4人目。過去3人は5回までに四球や失策で走者を出しており、5回を完全に抑えた先発投手は初めてだ。