腰痛で巡業を休んでいた関脇逸ノ城が復帰した。名古屋場所に10キロ増の体重230キロで臨んだことで、腰が悲鳴を上げたとか。「220キロまでにしないと…」と話しているらしい。そりゃあ、身長が193センチあるとはいえ、230キロはなあ…。重さは強力な武器とはいえ、やり過ぎは考えものですわな。

 重い人にも悩みはある。しかし、角界の場合、軽い人の悩みはもっと深い。名古屋場所千秋楽の7月22日、石浦がこぼしていた。

 「場所前は悪くなかった。地に足が着いてるし、柔軟性もあった。でも、場所が始まると力感がない、立ち合いとかの感覚も1歩ずれているというか、遅くて。いろいろ工夫したけど、うまくいきませんでした」

 東前頭15枚目。千秋楽を白星で締め、何とか7勝8敗にまとめたが、表情がさえない。本当の悩みはもっと深いところにあった。

 「僕の目標は“押して、押して”なんだけど、今の取り口はそれとかけ離れてしまっている。勝っても、変化によるところが多くて…。今年に入って、ずっとそう。情けないですよ」

 173センチ、116キロ。新入幕の16年九州場所で10勝5敗とブレークし、生きのいい小兵力士として注目を集めた。最高位は昨年春場所の東前頭12枚目。同年九州場所で十両に陥落したが、1場所で幕内に返り咲いた。巨大化が進む角界にあって、サイズを考えれば、健闘している。ところが、本人はまるで納得していない。

 昔から、理想の力士がいる。元関脇鷲羽山。70年代から80年代にかけ「ちびっ子ギャング」の異名をとり、土俵を沸かせた。多彩な技を駆使したが、人気を集めた最大の要因は“小兵なのに正攻法”な取り口にあったとされる。石浦は、そこに敬意と憧れを持つ。

 「やっぱり鷲羽山さんのような相撲がとりたい。うちの父(鳥取城北高相撲部総監督・石浦外喜義氏)には“あの相撲は(幕内力士の)平均体重が140キロの時代だからできたんだ”と言われます。でも、今の時代にそれができたら…と思うんです」

 鷲羽山の現役時175センチ、112キロのサイズは、確かに石浦に近い。近いが、時代が、状況が悪い。

 「自分の好きな相撲を、人に言われて曲げたらダメ。理想を求めたい。もう1回、考え直さないといけないと思っています」

 夏巡業もそろそろ終わり、9月8日から秋場所が始まる。石浦が悩んだ末にどんな準備をして、どんな相撲をとるのか。楽しみに待ちたい。【加藤裕一】