“孤軍奮闘”で地元を盛り上げる。新型コロナウイルスへの恐怖心などを理由に元三段目琴貫鉄が引退したことで、滋賀県出身の現役力士は西幕下28枚目鳰の湖(におのうみ、34=山響)だけとなった。

47都道府県で現役が1人だけなのは滋賀県だけ。幕内経験者の鳰の湖は「(琵琶湖の古称でもある)このしこ名だからこそ(地元の人に)激励していただくこともある。恥をかかない相撲を取りたい」と、故郷を思い奮起を誓った。

滋賀県は第5代横綱小野川や、昭和を彩った元関脇蔵間、元小結三杉里らを輩出してきた。現役の親方で唯一、同県出身の枝川親方(元前頭蒼樹山)は、県勢力士が1人となり「寂しいですね」と何度も繰り返す。同親方は審判部だけでなく巡業部にも所属。18年7月には8年ぶりとなる同県大津市での巡業開催に尽力した。「大津の巡業では、1人でも多く相撲の良さを知ってもらうという気持ちだった。滋賀からもっと力士を志す子が増えればいいんですが…」。

優勝力士がいない都道府県は1府12県。その中には滋賀も含まれている。郷土との結びつきが強い大相撲。場内アナウンスでは、力士の出身地は必ず紹介される。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

勝誠(手前)の攻めに耐える鳰の湖(撮影・河田真司)
勝誠(手前)の攻めに耐える鳰の湖(撮影・河田真司)