【イングルウッド(米カリフォルニア州)=奥山将志】挑戦者のローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)が、視察に訪れたWBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)の前で4階級制覇を達成した。7度目の防衛を目指したカルロス・クアドラス(メキシコ)との激闘を3-0の判定で制した。試合後の米テレビ局のインタビューでは、井上戦に前向きな姿勢を示し、井上も現役最強王者との対戦を熱望した。

 ボクシング界に輝く2つの星が「初遭遇」を果たした。試合後の控室。偉業を達成したゴンサレスのもとに、関係者に連れられた井上が姿を見せた。腫れた顔でソファにもたれかかっていた新王者は、井上を確認すると、すっと立ち上がった。「見に来てくれてありがとう」。深々と頭を下げると、井上も「素晴らしい試合でした。おめでとうございます」と一礼し、握手を交わした。

 リングサイドで観戦した井上の心を刺激したのは、ゴンサレスの勝負強さだった。隙のない連打と、巧みなディフェンスで王者を翻弄(ほんろう)。中盤、35戦無敗のクアドラスに打ち終わりの左フックを痛打され流れを奪われたが、そこからが“負けない男”の真骨頂だった。要所で得意のアッパーを返すと、最後まで手数を緩めず攻め抜いた。「今までで一番難しい試合だった。それでも私は勝利した」。激闘を制し、目に涙を浮かべてベルトを受け取った。

 同じスーパーフライ級の世界王者となったことで、世界が期待する夢対決も、さらに現実味を帯びてきた。試合直後、全米で中継されたテレビ局のインタビューで「井上選手とのスーパーファイトが期待されますが」と聞かれると、よどみなく言った。「もちろん。喜んでやりたい」。

 井上も、拳を交える日をはっきりとイメージし始めた。「同じ階級の王者となり、より意識する存在になった。絶対に戦うことになる相手だと思っている」。短く言葉を残すと、サインを求めるファンにもみくちゃにされながら会場を後にした。「全階級を通じて最強」と評されるゴンサレスと、日本ボクシング界の未来を担う井上。同じ時代、同じ階級に生きる2人の物語が、静かに始まった。

 ◆ローマン・ゴンサレス 05年にプロデビューし、現在までプロアマ通じて133戦全勝。08年にWBAミニマム級王座、10年に同ライトフライ級王座、14年にWBCフライ級王座を獲得。16年9月にWBCスーパーフライ級王座を獲得し、4階級制覇達成。愛称「ロマゴン」。身長160センチの右ボクサーファイター。15年に米大手ケーブル局HBOと契約。米老舗ボクシング専門誌「リングマガジン」選定の「パウンド・フォー・パウンド」(全階級通じての最強選手)1位。