11年ぶりに開催されたノア武道館大会で、GHCナショナル王者の拳王(36)が、挑戦者の船木誠勝(51)を破り、5度目の防衛に成功した。終始、船木の猛攻を受け、メッタ打ちにされたが、一瞬のスキを突いて逆転のドラゴンスープレックスで3カウント。夢だと言い続けてきたあこがれのリングでベルトを守り「勝てたのは、集まってくれた観客と、日本武道館のおかげだ」と感謝した。

「プロレスラー=最強」を目指す拳王にとって、それを体現する最高の相手との対戦だった。先月31日の前哨戦では失神KOされ「負ける気がしない」と挑発される屈辱。「めちゃめちゃ悔しい。でもこのままで終わらせるわけねえだろ。勝って最強を手に入れたい」と挑戦者の気持ちで挑んだ。

10年12月以来の聖地での興行。08年にデビューした拳王は、当時ノアに所属しておらず、武道館でプロレスをするのは初めて。「会社が右肩下がりだった状況で何か起爆剤のような発言をしないといけない」。3年前から誰よりも早く、その思いを発信してきた。「みんなの前で言うことで伝わることも多い。言い続ければ夢は絶対にかなう」と喜びをかみしめた。

夢を実現したことで次なる目標も設定。「超満員の武道館で何度も試合をやること」と明かした。「1回きりではなく、ここからが大事」。ノアは昨年、コロナ禍でいち早く無観客試合を行い、ファンに向け、自分たちの戦いを発信、勇気と元気を全国に届けた。今回も緊急事態宣言中というリスクの中、会社が実施を決断。拳王もその思いに最高の試合で応えた。「ノアを業界1位にのし上げていく。俺についてこい」。拳王はいつも以上に力強く叫んだ。【松熊洋介】