ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(32=Ambition)が、日本ボクシングコミッション(JBC)から謝罪を受けた。昨年のV2戦でドーピング検査違反騒動となり、直接謝罪や役員退任などを要求していた。12日、都内でJBC永田有平理事長(66)との同席会見で謝罪文を手渡され、永田理事長と浦谷信彰執行理事(62)の進退伺提出が明かされた。検査改善、情報漏えい追及は未決も「1つのけじめ。次へ進むために」と受け入れた。9月に東京でV3戦が濃厚となっている。

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井岡は会見の冒頭、永田理事長から井岡と家族に心労と迷惑をかけたとの謝罪を受け、謝罪文を受け取った。そして「直接謝罪を求めてきた。すっきりした気分になるわけはないが、1つのけじめとして謝罪を受け入れたい。スポーツマンらしく、今後は前だけを向いて、防衛戦に勝つことに集中したい」と表明した。

JBCは5月、ずさんな検査体制で井岡の違反は認められず、処分はなしとする倫理委員会の答申を発表した。井岡陣営は納得できず、国内プロボクシングジムの会長らで構成する日本プロボクシング協会(JPBA)に、JBCの役員退任などを求める上申書を提出した。

これを受け、JBCはドーピング検査委員会と、一部週刊誌に情報が漏れた原因を追及するガバナンス委員会を設置。検査については年内をメドに体制などを改め、ガバナンス委員会は8月末に調査が終了する。永田理事長は、浦谷執行理事と2人の進退伺を長岡勤コミッショナーへ6月に提出したことも明かし、調査終了後の理事会で処遇が審議される。JBCの一連の取り組みに井岡陣営は一定の評価を与え、直接謝罪を受け入れることになった。

騒動は4月の週刊誌報道で始まった。井岡は「人生が変わったぐらい苦しかった」と、この3カ月を振り返った。一方で「ボクシング人生で求めているものがある。ここで止まれない。簡単ではないが切り替えていく」と話した。

7月15日付でジムも「志成ボクシングジム」と改称し、間借りから目黒区内にジムを設けた。WBOからは同級2位フランシスコ・ロドリゲスJr.(27=メキシコ)と指名試合を指令され、相手陣営が「9月に東京」と明かしている。検査改定は間に合いそうもないが「決まればやるだけ。日本のボクシングを盛り上げ、貢献していきたい」との決意を口にした。【河合香】

◆井岡騒動の経緯 昨年大みそかの田中恒成(畑中)との2度目の防衛戦時のドーピング検査で、採取された尿検体が大麻成分の陽性反応を示したと4月下旬、一部週刊誌が報道。井岡側が全面否定する中、JBCが倫理委員会で調査、審議したところ、JBCの不備や検査の管理体制に不手際が判明し、5月19日に「違反はなかった」との結論に至った。その後、井岡はJBC側から一定の謝罪を受けたが、所属ジムとして(1)JBCの役員退任(2)ドーピング検査の刷新(3)一部週刊誌に情報が漏れた原因の究明(4)内容の伴った謝罪、の4点を求めていた。