前WBC世界ライトフライ級王者の矢吹正道(29=緑)が3日、名古屋市内の所属ジムで現役続行を表明した。再起戦も決定。WBO世界同級5位のタノンサック・シムシー(21=タイ)と8月11日、愛知県の刈谷市産業振興センターあいおいホールで契約50.0キロの10回戦で対戦する。

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矢吹は現役を続ける注文をつけた。「強い相手とやりたい。弱い相手とやっても時間の無駄やから」。

矢吹は3月19日の初防衛戦、寺地拳四朗(30=BMB)とのダイレクトリマッチで3回KO負けし、王座から陥落した。「負けた後は辞めようと思って1週間ぐらいダラダラ過ごしていた」と振り返る。

その折れかけた心を立ち直らせたのが、ボクシングを始めたばかりの8歳の長男の存在。毎朝6時、登校前にミットを構えるのが日課になり、矢吹自身も大きな刺激を受けた。「このままでは終われないなと。もう1回、世界王者になろうと思いました」と言う。

タノンサックはWBA世界同級スーパー王者の京口紘人(ワタナベ)への挑戦が決まっていたが、コロナ禍で中止となった。23戦23勝(20KO)。同階級では屈指の実力者だ。

再起戦の相手も矢吹が「強い相手とやりたい」と強く希望し、マッチメークされた。今後の展望については「負けた立場で何も言えない。チャンスがあるところで(世界を)狙いたい」と意気込んだ。

ただ、本音ではWBO世界フライ級王者中谷潤人(M.T)の顔が常に浮かぶ。全日本新人王戦で判定負けしたが、「今も負けたとは思っていない。決着をつけたい」と話す。中谷はタイトルを返上し、階級アップが基本線だが矢吹との対戦が決まれば盛り上がりは必至。「絶対に勝ちたい」。負けたままで終われない。“元ヤン世界王者”が欲望をむき出しにした。【実藤健一】

○…矢吹はボクシングの底辺拡大の観点で昨年から5月5日のこどもの日に名古屋市の緑ジムで「スパーリング大会」を開催している。ボクシングという競技の衰退に危機感。残したい、盛り上げたい思いから自分で動きだした。「ここから世界王者が生まれてほしいと思います」。自身の8歳の長男も、創設した昨年から参加。将来楽しみな逸材を育てていく。

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