16年に日本人初の世界ユース制覇などアマ13冠を誇るルーキー堤駿斗(23=志成)が白星でプロ初陣を飾った。史上10人目となる特例でのA級(8回戦以上)デビュー戦で、東洋太平洋フェザー級5位ジョン・ジェミノ(30=フィリピン)と拳を交え、3-0の判定勝ち。試合途中に両拳を痛めるアクシデントを乗り越え、初勝利をつかんだ。プロの厳しさも感じながら世界王者への道を一歩を踏みだした。

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プロデビューの堤に序盤からアクシデントが起きた。アマで10オンスだったグローブが8オンスとなると、自身のパンチ力に拳が耐えきれなかった。パンチ力が伝わりやすく、柔らかいメキシコ製グローブだった影響もあり、2回に左拳に激痛が走った。5回には右拳にも痛みが出てきた。「拳は今までにない痛み。プロの厳しさを学んだ」と振り返りながらセコンドに入った父直樹氏の助言を受けて立て直し、意地で8回を戦い抜いた。「いろいろ起こった中で戦い抜けたのは自分の経験値」と収穫を口にした。

両拳を痛めながらも鋭い左ジャブからのワンツー、右ストレート、左ボディーと持ち味を出した。しかしダウンを奪えないままに終わった初陣には自ら辛口採点。「インパクトを与える勝ち方ができずに悔しい。(相手への)ローブローも申し訳ないと。プロでの経験のなさが出た」と反省も忘れなかった。

日本人初の世界ユース制覇、高校生ながら全日本選手権を制し「井上尚弥2世」と言われた。アマ13冠の輝かしいアマ実績が認められ、プロテストはB級(6回戦)合格ながら、井上ら過去9人しかいない特例のA級(8回戦)デビューとなった。「自分の色で、自分のボクシングでインパクトを与えることができなかった。1日1日を大切に修業したい」。高いハードルを設定していたこともあり、悔しさをにじませた。

この勝利で東洋太平洋フェザー級ランキングに入る見通し。堤は「自分の武器は東洋太平洋ランカーのベテランに通じた。年内にもう1試合やりたい。必ず世界王座を取るためにプロにきた。フェザー級は(世界挑戦まで)時間がかかる。10戦でどれだけ成長できるか」。口元を引き締めながら、将来像をイメージしていた。【藤中栄二】