08年北京五輪柔道男子100キロ超級金メダルの石井慧(35)が、クロアチア人の「サトシ・イシイ」としてボクサーデビューを飾った。

1勝1KOの高山秀峰(31=スパイダー根本)とヘビー級4回戦で対戦。相手を10キロ上回る110キロの体を生かし、圧力をかけ続けてダウンは奪えずも判定2-0で勝利した。今後も海外を中心にボクシングを続ける意向を明かした。

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汗びっしょりの体にクロアチアの国旗をまとい、勝利を確信したように両手を高々と掲げた。ボクサー、サトシ・イシイのデビューを判定勝利で飾った。

「(ボクシングは)楽しかった。オリンピック競技だし、車好きの人が『あの車に乗ってみたい』って興奮するじゃないですか。それと同じ感覚です」と話す一方で、「K-1デビューの時も同じことを言いましたが『もちはもち屋』ですね。イメージしていたより難しかった。デビュー戦だけど全然ダメでした」と反省の言葉も並べた。

サウスポースタイルでガードを上げ、距離を詰めていった。しかし1回に高山の右フックを食らい、グラッときた。「高山選手の気持ちが思ったより強かった。勝てたのは体力とスタミナ。自分はどのスポーツでもスタミナが一番大事と思っているんで」。3回からは密着するように距離を詰めて、ロープにくぎ付けにして押し切った。

今後も練習拠点をクロアチアに置き、元K-1王者ミルコ・クロコップの指導をあおぎながら、ボクシングを続ける意向を明かした。日本での試合は「JBC(日本ボクシングコミッション)さんの理解が必要なので、なにとぞよろしくお願いします」とペコリ頭を下げた。

柔道で世界王者となり、総合格闘技でも活躍した経験と可能性を示したが、「僕は絶対、世界王者になれない。柔道では頂点の景色を見ることができたので(世界王者の夢は)息子に託したい」。リングをわかせるおもしろい逸材は間違いなく証明した。【実藤健一】

▽イシイに敗れた高山 スピードは想定通りだったがやはり110キロの重さがあった。岩とか大木を押しているイメージ。パンチは見えるからいなせたが反撃できなかった。(試合後、石井に)「強かった」と言ってもらってうれしかった。

<08年北京五輪後の石井慧>

◆プロ転向 08年11月3日、大阪市内のホテルで会見して「総合格闘技に転向することになりました」。参戦団体を特定せず、国内、米国のUFCも視野に入れて「60億分の1の男」になることを目標に掲げた。

◆黒星デビュー 09年12月31日に「Dynamite!」で、吉田秀彦とのデビュー戦は3回判定負け。

◆ヒョードルと対戦 11年12月31日に熱望していたエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)戦が実現したが、1回KO負け。

◆柔道に再挑戦も 総合格闘技と並行して、米国代表での16年リオデジャネイロ五輪を目指した。14年5月には全米体重別選手権の無差別級に出場。準々決勝で反則負けして「両者指導の後、1人だけ指導をとられ気持ちが切れた」。

◆無念の負傷 今年4月にK-1無差別級トーナメントに出場。1回戦は2回KO勝ちも、脇腹を負傷。ドクターストップにより準決勝に出場できなかった。

◆クロアチア 14年に2度対戦して連敗したミルコ・クロコップがいるクロアチアを練習拠点としている。クロアチア国籍を取得して、プロボクシングデビューに際しては同国でボクシングライセンスをとった。

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