ボクシング前世界4団体統一バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が今春、日本でWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(28=米国)に挑戦することで合意に達したと18日(日本時間19日)、米スポーツ局ESPNが報じた。詳細は決まっていないものの、5月を目標に交渉が進められていると伝えている。同級でナンバーワンと言われる無敗王者フルトンへの挑戦が決まれば、いきなり2団体の世界王座を獲得できるビッグチャンスとなる。

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正式決定すれば、世界初となる2階級での4団体統一を狙う井上にとって最高の対戦相手になることは間違いない。井上と無敗の2団体統一王者フルトンとの対戦交渉が合意に達したとESPNが報じた。「フルトンは単にスーパーバンタム級で最高のファイターであるだけでなく、階級に関係なく最高のボクサーの1人。フルトンと井上の戦いは、このスポーツが提供できる最高カードの1つだ」と伝えている。

今月13日、井上が横浜市内のホテルで会見。世界バンタム級のベルトすべてを返上すると表明した直後から、一気にスーパーバンタム級初戦がクローズアップされている。翌14日には地元の神奈川・座間市で行われたイベントで「交渉している対戦相手は自分も耳にしていますが、すごくモチベーションが上がる相手」と意欲を示した上で、23年初戦について「春ごろと聞いている」と現状を明かした。17日(日本時間18日)にはWBO世界スーパーバンタム級1位にランクされ、指名挑戦者と位置づけられたばかりだ。

当初、フルトンはWBC世界フェザー級1位ブランドン・フィゲロア(米国)とのWBC世界同級暫定王座決定戦に向かうとみられていた。両者にとって21年11月以来の再戦で、一部米メディアでは2月25日、米ミネアポリスで開催されると報じられた。しかしESPNはフィゲロアは3月4日に米国で、元WBC世界同級王者で現同級3位のマーク・マグサヨ(27=フィリピン)との同暫定王座決定戦について交渉中であると報道した。この点からも、井上-フルトン戦が実現可能であることを強調している。

所属ジムの大橋会長はこの日、交渉している対戦相手について挙げなかったものの「すべて交渉中です」とだけ述べた。話し合いが進んでいることをうかがわせる口ぶりでもあった。ESPNは「日付は決まっていないが、情報筋によると(フルトン-井上戦は)5月を目標としている」とも伝えた。井上が今春、日本でいきなり2団体王座を獲得する可能性のある、ビッグマッチが浮上した。

〇…2団体統一王者フルトンは井上との対戦に前向きだ。ESPNによると昨年6月、井上がスーパーバンタム級に転向した場合、対戦が現実的になるとし「多くの人が(井上戦を)見たいと思っているし、それについて多くの人が話したいと思うだろう。私が井上のようにもっと知られていたら」と発言。同時期に伝統と権威のある米老舗雑誌、ザ・リングのパウンド・フォー・パウンド(階級超越した最強ボクサー)ランクで1位に輝いた井上に対し、敬意を表している。

◆フルトンとは アマ戦績75勝15敗で14年10月にプロデビュー。20年までの6年のキャリアで18勝(8KO)無敗、かつ7人の無敗選手を撃破した。現在のKO率は38%と高くないが、ディフェンス力は抜群。両足スタンスを広く保ち、中、長距離から左ジャブを好打しながらリズムに乗る右ボクサーファイター。21年1月、WBO王者アンジェロ・レオ(米国)に判定勝ちし世界王座獲得。同年11月、WBC王者ブランドン・フィゲロア(米国)も撃破し2団体統一王者となった。昨年6月、久保隼、松本亮を倒した元2団体統一王者ダニエル・ローマン(米国)にも判定勝ちし、同級最強を証明している。

◆世界スーパーバンタム級戦線 世界主要4団体王座は2人の王者が分け合う。WBAスーパー、IBF王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBC、WBO王者スティーブン・フルトン(米国)が無敗で君臨。実力、実績ともに群を抜く。アフマダリエフは昨年6月、ロニー・リオス(米国)との防衛戦に勝利した際に左拳を骨折。復帰後はIBF同級1位マーロン・タパレス(フィリピン)との指名試合を義務付けられている。タパレスは岩佐亮佑ら日本勢との対戦を経験している。WBC1位は山中慎介と2度戦ったルイス・ネリ(メキシコ)、WBC8位に元WBO世界バンタム級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)もランクされるなど群雄割拠。