挑戦者となるIBF世界ライトフライ級王者矢吹正道(32=LUSH緑)が国内初の「2階級同時制覇」を成し遂げた。現王座を保持したまま、1階級上となるIBF世界フライ級王者アンヘル・アヤラ(24=メキシコ)に挑戦し、12回1分54秒、TKO勝ちで新王者となった。計3回のダウンを奪って仕留め「1戦1戦がゴールだと思っている。今日も勝ったことがゴールやと思っている。勝って良かった」と安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

日本選手で初めてとなる2階級の世界ベルトを同時に保持。矢吹は「それは結果でついてくるものであって全然気にしていないですけど。(4団体統一スーパーバンタム級王者)井上(尚弥)チャンピオンがまたすごい偉業を成し遂げて抜いて、塗り替えると思う。自分なんてビビたるもの」と謙虚な姿勢だった。

1回に左フックでダウンを奪った矢吹は2回には右ストレートでダウンを追加。完全にペースをつかんだ3回に偶然のバッティングで右目下をカット。王者も右目上をカットして両者ともに流血しながら打ち合う壮絶な展開となった。矢吹は「めっちゃ苦しい展開になると思ったら、本当に苦しい展開になってしまって。カットもあって、途中からずっと見えなくなっちゃって。右足もちょっとつっちゃったので、いきたくてもいけなかった。ちょっとしょうもない試合してしまった」と振り返った。

矢吹にとって人との戦いの前に体重との戦いでもあった。ライトフライ級のリミットは48・9キロ。フライ級に上げればリミット50・8キロ。この約2キロが大きな影響をもたらす。矢吹は調整段階で「順調って感じです」と言い、前日計量前も「死ぬほど水抜きをしなくてよかった」と話した。

その上で「リングに上がってみないと分からないけど、どれだけ動けるのか楽しみ」と言った。ライトフライ級で死ぬほどの減量を経験しても、試合をこなしてきた。約2キロの恩恵を受けてどこまで進化できるのか、自分自身でも楽しみにしていた。

2階級制覇へ、陣営も全力を注いだ。スパーリングパートナーには元WBC世界フライ級王者クリストファー・ロサレス(30=ニカラグア)を招いた。その元世界王者は「(フライ級でも)全く問題ない。右ストレートは差し込まれる」と矢吹を評価した。

ロサリオは4年前に矢吹が挑むアヤラとノンタイトル戦で対戦。判定負けしたが、その力量を知る。「(アヤラは)力のある選手だが前に押すと足が出ずに下がるのが弱点。矢吹は回を重ねるごとに強さを増すがアヤラは平行線。倒す可能性は十分ある」と話していた。

矢吹は元世界王者とのスパーに「常に緊張感を持ってやれている」と感謝し、「痛めつけながら最後にKOに持っていければと思っている」と描いた。「自分の中で強敵と思っている」という王者アヤラを撃破して新たなステージへ。弟の力石政法(大橋)も5月に初の世界戦に臨む。

矢吹は「弟が5月28日、28戦27勝27KOのめちゃめちゃ強いヤツと戦うので。そこでスーパーフェザー級というすごい階級で、世界チャンピオンになることに対して良いバトンを送れたと思う」と笑顔。夢に描いていた兄弟同時世界王者へ。まずは兄の矢吹が道筋をつけた。

 

◆ラウンドVTR

1回 矢吹が開始早々から左ジャブ2発を決める。さらに右ストレートも王者の顔面をとらえる。50秒すぎに170センチの長身アヤラが距離をつめて左フックを浅く決める。2分すぎにも矢吹の左ジャブが王者のアゴをはね上げる。さらに右強打がアヤラの顔面をとらえる。終了間際に矢吹が左フックでダウンを奪う。【日刊採点】矢吹10-8 

2回 王者が開始から左ジャブを突きながらジワジワと前に出る。矢吹がすかさず右ストレートを顔面にヒットさせる。1分すぎにアヤラがサウスポーにスイッチするが、すぐに右構えに戻す。中盤は矢吹の左ジャブがよく決まる。2分20秒すぎに矢吹が右強打をカウンターで王者の顔面に決めてこの試合2度目のダウンも奪う。立ち上がったアヤラが前に出てパンチを繰り出すも空を切る。【日刊採点】矢吹10-8 

3回 開始からジャブの突き合い。アヤラは矢吹の強打を警戒して手数が少ない。中盤にアヤラの左ボディーブローが決まる。1分50秒すぎにリング中央で激しいバッティング。矢吹は右目の下をざっくりとカット。アヤラは右眉の上をカットして流血戦に。終盤に矢吹の右ストレートが決まる。【日刊採点】矢吹10-9 

4回 矢吹は距離をとって左ジャブを突く。王者が連打をふるって前に出て打ち合いに。中盤は両者警戒して手数が減るが、矢吹の右強打がときおりヒット。2分すぎに矢吹の左フックがカウターでヒット。アヤラは前に出るが矢吹のワンツーがヒット。両者の流血がひどくなる。【日刊採点】矢吹10-9

5回 開始からアヤラが左ジャブをついて前に出る。矢吹はジャブを出しながら距離をとる。中盤はともにジャブの突き合いが続く。終盤はアヤラが前に出るが、矢吹は左ジャブでかわす。【日刊採点】矢吹10-9

6回 開始からにらみあい。30秒過ぎにアヤラがサウスポーにスイッチしたが、矢吹の右ストレートを浴びて右構えに戻す。中盤の打ち合いはほぼ互角。後半はアヤラがジワジワとプレッシャーかけるが、矢吹が左ジャブを軸に距離をとる。両者有効打はなし。【日刊採点】アヤラ10-9

7回 矢吹が左ジャブからプレッシャーをかける。40秒すぎに矢吹の右ストレートが決まり、アヤラはひざが折れる。1分すぎにアヤラの右ストレートが決まり、矢吹は後退。さらにアヤラの左フックがヒット。矢吹は足をつかって距離をとるが手数が減る。終盤は矢吹の連打が決まる。【日刊採点】アヤラ10-9 

8回 前半は矢吹が左ジャブでペースを握る。1分20びょすぎにアヤラの左フックがヒット。その後、アヤラの連打を浴びて矢吹が後退。残り30秒、リング中央で激しい打ち合いに。ともに有効打が決まるが、ほぼ互角か。【日刊採点】アヤラ10-9 

9回 30秒すぎに矢吹の右ストレートがクリーンヒット。矢吹は無理には打ち合わず、左ジャブを突いて距離をとる。中盤に矢吹のボディーブローが決まる。2分すぎまでアヤラは手数が少ない。終盤に矢吹の右ストレート、左ボディーブローがヒット。【日刊採点】矢吹10-9 

10回 開始早々、アヤラの右フックが矢吹の顔面にクリーンヒット。矢吹は冷静にジャブをついて距離をとる。中盤に矢吹の右ストレートが浅くヒット。1分すぎにアヤラのボディーブローが決まる。終盤に矢吹の連打がヒットするが、アヤラも打ち返す。【日刊採点】矢吹10-9 

11回 アヤラは開始から鼻血を流す。矢吹も右目下の傷から流血が激しくなる。矢吹の左ジャブがポンポンと決まる。中盤は矢吹が左ジャブから右強打を攻勢に。アヤラは手数が極端に減る。終盤はアヤラのボディーブローが決まるが、矢吹も打ち返す。【日刊採点】矢吹10-9 

12回 アヤラが前に出てパンチを 繰り出す。矢吹は左ジャブをつきながら右カウンターを狙う。1分20秒すぎに矢吹が右フックのカウンターでダウンを奪う。立ち上がったアヤラに矢吹が連打をたたみかけたところで、レフェリーがストップ。矢吹がTKO勝利で日本初の2階級同時王者に。

◆矢吹正道(やぶき・まさみち)本名・佐藤正道。「佐藤じゃつまらない」と不滅のボクシングマンガ“あしたのジョー”の主人公・矢吹丈からリングネームをもらった。1992年(平4)7月9日、三重県鈴鹿市生まれ。16年3月、2回TKO勝ちでプロデビュー。20年7月、日本ライトフライ級王座を獲得。21年9月にWBC世界ライトフライ級王座獲得も寺地と22年3月の再戦に敗れる。今年10月、IBF同級王座を獲得。戦績は18勝(17KO)4敗。身長166センチの右ボクサーファイター。家族は恭子夫人と1女1男。

【ボクシング】矢吹正道が日本人初2階級同時制覇!アヤラとの12回流血激闘を制す/詳細