疲労困憊(こんぱい)と引き換えに、ベテランが白星を手にした。西幕下17枚目の豊ノ島(34=時津風)が、今場所の3番相撲に勝ち、再び白星先行の2勝1敗とした。

 東幕下19枚目の寺尾(30=錣山)と対戦。左四つ、右上手も引き、相手に上手を与えず、やや半身の体勢にさせて主導権を握った。ただ、寺尾も右からの投げで応戦した後、苦しい体勢にジッと我慢を決め込み動かない。豊ノ島も何度か寄ったが攻めきれず、約1分の長い相撲になった。最後は土俵を背に寄られたが、右上手からの出し投げで仕留めた。

 先場所も7番相撲で対戦し5勝目を挙げた相手。その時と、上手出し投げという決まり手も、勝負を決めた向正面やや赤房寄りも、全く同じだった。「素直に疲れた」と笑いながら第一声を発したが「何回か攻めているうちに決め手はあるだろうと思っていた。出し投げを打ったところで(勝負は)決まるだろうなと思った」とベテランらしい読み通りの展開で勝った。

 ある時から「極端な話、8勝7敗を続けていれば関脇にはなれる」と関取復帰に、はやる気持ちを抑えるようになった。きっかけは最近3場所の番付昇降にある。夏場所は東幕下19枚目で3勝4敗。1点の負け越しでも翌名古屋場所は、番付が9枚落ちて同28枚目に下がった。その名古屋場所は5勝2敗と3点の勝ち越しながら、今場所の番付アップは11枚にとどまった。

 負け越しの「重み」を痛感させられる、ここ数場所だった。7戦全勝を目標に、敗れれば次は6勝1敗、次は5勝2敗…と考える思考を「番付を下げないこと。そのためには、まず勝ち越すこと。現実をしっかり見ようと思って」と変えた。三役経験13場所、三賞受賞10回、金星獲得4個。酸いも甘いもかみ分けた男が、まずは原点回帰の勝ち越しを目標に、関取復帰の道を歩む。