大相撲の元関脇逆鉾の井筒親方(本名・福薗好昭=ふくぞの・よしあき)が16日、都内の病院で死去した。58歳だった。秋場所前から体調を崩し、本場所を休場して入院。16日夜に容体が悪くなった。関係者によると、膵臓(すいぞう)がんとみられる。

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土俵ではやんちゃで血気盛んだった。84年初場所7日目に、全勝の横綱隆の里を得意の外掛けで破った。初金星に、思わず土俵上でご法度のガッツポーズをした。それまで高見山が1度やったが、それ以来となる日本人力士で初めてのことだった。

両手をつく立ち合い正常化が求められた秋場所では、取り直し第1号にもなった。大関北天佑をもろ差しで電車道も、九重審判長(元横綱北の富士)に「ちょん立ちだからもう1回」と不可とされた。これに逆鉾はぶぜんとし、審判長をにらみつけながら土俵を横切って戻ったこともあった。

弟寺尾ら昭和38年生まれのサンパチ組が活躍する時代に、2歳年上も存在感があった。父譲りのもろ差しからガブリ寄りが十八番で、相撲っぷりに血統もあって人気者。金星7個に三賞9度。胸を張り、肩をいからせ闊歩(かっぽ)していた。土俵でもアゴが上がる癖が直らなかったが…。

普段はシャイでまじめ。初めて飲んだ時も「記者さん、俺なんか意味ないよ。アビ(弟寺尾の愛称)を誘った方がいいよ」とはにかんだ。小さいころから初代若乃花のファン。雑誌や本を買いあさり、現役時も読みふけった。昭和の土俵を沸かせた個性派だった。【河合香】