幕下は東42枚目で大関朝乃山の付け人、寺沢(25=高砂)が、栃清龍(春日野)をはたき込み、7戦全勝で優勝を飾った。

「立ち合いから右下手をとって、引きつけて出ていくイメージをしていたが、いなされてあせってしまった」。激しい攻防で土俵際まで押し込まれたが、逆転技で優勝をたぐり寄せた。

先場所2日目、干していたまわしが盗難にあった。最愛のペットだった、うさぎの「ラルキー」の遺骨が入ったお守りとともに。アマ時代から欠かさず、忍ばせていたもので必死に返却を求めたがいまだ返ってきていない。寺沢は「先場所に起こったことは先場所で終わっている。気持ちを切り替えた」と言った。

御嶽海、若隆景が先輩にいる東洋大出身。期待の逸材だったが、初めて番付に載った18年夏場所で腰を痛めて途中休場し、場所後に椎間板ヘルニアの手術で番付外まで落ちた。そこから「土台作りして頑張ろうと稽古してきました」。1日に四股を500回以上、コツコツと努力してきたことが報われた。

朝乃山からは「いいな、優勝か」と独特の励ましをもらったという。「大関と一緒に優勝できたらうれしいです」。苦難を乗り越えた先の笑顔は華やかだった。