大関貴景勝(24=常盤山)の綱とりが事実上、消滅した。平幕の宝富士に上手投げで敗れ、初日から4連敗を喫した。打ち出し後、横綱昇進を預かる審判部の伊勢ケ浜部長(元横綱旭富士)は、綱とりの見解を問われ「4連敗もして、そういうことを聞くのがおかしい」と報道陣の質問を一蹴。最高位への挑戦は、振り出しに戻った格好だ。かど番の2大関、正代は連敗を免れ3勝目、朝乃山は星を五分に戻した。

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貴景勝の“緊急事態”に歯止めがかからない。横綱昇進が懸かる場所で、新入幕だった17年初場所以来4年ぶりとなる初日から4連敗。敗戦のショックからか、取組後は今場所初めてリモート取材に応じずに、無言で国技館を引き揚げた。

先手を取っても、決定打に欠ける。立ち合いは当たり勝ったが、その後の突進を宝富士にうまくいなされた。左をたぐられ、肩越しから左上手を取られると、振りまわされて土俵にたたきつけられた。4連敗は大関昇進後、自己ワースト。持ち前の突き押しの威力が、影を潜めている。

昇進を預かる、幕内後半戦の審判長を務めた伊勢ケ浜審判部長は、綱とり“白紙”を示唆した。打ち出し後の代表取材で見解を問われると「4連敗もしてね、そういうことを聞くこと自体がおかしい。11勝で優勝したことがあるの?」と語気を強める。仮に5日目から千秋楽まで全勝しても11勝止まり。1場所15日制が定着した49年(昭24)夏場所以降、11勝での優勝は最低成績で過去3度しかない。ましてや両横綱が不在の場所。「高いレベルでの優勝」を求めていた同審判長は「そういうことを聞く意味が分からない」と繰り返した。

今場所後の昇進はもちろん、来場所に綱とりを継続する望みも薄くなった。場所前、貴景勝は「何度もこういう機会はやってこない」と強調していたが、白鵬は3度目、稀勢の里は6度目の挑戦で綱を射止めた。まだ24歳。長い目で見れば、最高位への道は完全に閉ざされたわけではない。【佐藤礼征】