大相撲秋場所(両国国技館)がいよいよ明日12日、初日を迎えます。日刊スポーツでは大相撲評論家として、日本相撲協会を退職した先代錦島親方(元大関朝潮)の後任に、第66代横綱若乃花の花田虎上氏(50)を招聘(しょうへい)しました。弟貴乃花(元横綱)とともに空前の「若貴フィーバー」を巻き起こし、小兵ながら頂点まで上り詰めた花田氏は、協会退職後も明解な相撲解説などマルチに活躍中です。秋場所を前に早速、就任への抱負や秋場所の見どころなどを語ってもらいました。

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今回、ご縁があって日刊スポーツの評論家を務めることになりました。協会を退職して20年以上たちましたが、この間も自分を育ててくれた相撲の神様に、少しでも恩返ししたいという気持ちでテレビ、雑誌などのメディアで、解説をさせていただきました。協会を退職した人で初めて懸賞をかけることもありました。苦しかったり嫌な思いもたくさんした現役生活でしたが、間違いなく自分を育ててくれた世界です。相撲界の発展に良かれと思うことがあれば、厳しいことを語らせてもらうかもしれませんが、単なる批判でなく、相撲界の発展に微力でもなればという気持ちです。読者の皆さま、どうぞよろしくお願いします。

さて今場所の展望です。白鵬が休場したこともありますが、やはり優勝候補は普通に照ノ富士でしょう。白鵬もそうですが、対戦相手によって「こうやって取ればいい」と考えながら工夫して取れるから横綱になれたと思います。何より、これだけの体(192センチ、184キロ)があるし最近の成績を見てもズバぬけている。心配があるとすれば、後半になると脇が甘くなること、それとやはり膝に爆弾を抱えていますから毎日のケアも大切です。

ただ、私が一番の不安要素と思うのは横綱土俵入りです。土俵に入るタイミング、足の運び方、正面に尻を向けてはいけない…など間違ってはいけないと神経をすりへらします。私の新横綱の時は曙と貴乃花が先だったので参考になりプレッシャーも少しは和らぎましたが、一連の作業を終えやっと取組のことを考えられるようになりました。白鵬がいない一人横綱のプレッシャーは、自信を持って臨める取組より、土俵入りの方が大きいと思います。それも慣れれば本来の力を発揮出来るでしょう。

優勝争いの2番手は…すぐには出ません。正代には自信が感じられないし、貴景勝は首のケガが心配。対抗馬がいないのが残念ですね。あえて対抗馬になってくれたらうれしいな、と期待したいのが新関脇の明生と、いい意味で予想を裏切ってくれる御嶽海。いい場所にしてもらいたい、という願いを込めて豊昇龍と霧馬山が、場所をかき回してくれることを期待します。

◆花田虎上(はなだ・まさる)本名・花田勝。元大関貴ノ花の長男として71年(昭46)1月20日、東京都杉並区生まれ。88年春場所に若花田のシコ名で弟貴花田(のち横綱貴乃花)とともに初土俵を踏む。93年夏場所から若ノ花に改名、同年7月に大関昇進。94年九州場所から3代目若乃花。98年5月に第66代横綱に昇進した。00年春場所引退。通算成績は573勝286敗124休。幕内優勝5回、三賞9回、金星2個。00年に日本相撲協会を退職後は、NFLや日本社会人アメリカンフットボールXリーグに挑戦するなど相撲評論家、タレント、実業家として幅広く活動。