再入幕の西前頭15枚目・阿炎(27=錣山)が千代大龍を引き落として勝ち越しを決めた。最高位小結の阿炎だが、昨年の7月場所中に日本相撲協会のガイドライン違反が発覚し、同場所を途中休場。翌場所から3場所出場停止などの処分を受けた。幕内での勝ち越しは2年前の九州場所以来となる。横綱照ノ富士、大関貴景勝が9連勝。関脇御嶽海も勝ち越して1敗を守った。

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生まれ変わった阿炎が、再起の勝ち越しを決めた。「立ち合いの呼吸が合わなくて、立ち遅れてしまった」と言うが、圧力は十分に伝わっていた。当たってからの鮮やかな引き落としを千代大龍に決めた。9日目の勝ち越しは関取で自己最速。幕内では19年九州場所以来の勝ち越しを決めた。

この日、師匠の錣山親方(元関脇寺尾)がNHKの解説を務めた。「稽古場では子どもですよ」と愛情たっぷりに語り、一方で「(突っ張りの)回転を意識するようになった」と変わり身を明かした。

昨年の7月場所中に日本相撲協会のガイドライン違反が判明し、出場停止などの重い処分を受けた。その前にもSNSへの不適切な投稿で協会から厳重注意を受けたこともある。奔放なタイプだったが、昨年に結婚。愛娘も授かり変わった。「今は相撲をとれていることに感謝しています。集中して相撲をとれているのがいい」と土俵に集中する。

処分中は家族とは別居し、住居を錣山部屋にすることを協会から義務づけられた。処分明けの今場所前に、まだ同居はしていないことを明かし「幕内で勝ち越して、自分の中で『よし』と思った時に胸を張って一緒に住める」。その幕内での勝ち越しを果たしたが、この日はプライベートなことを聞かれても「今は明日のことだけ。場所に集中している」と応じなかった。

最高位小結の実力者が、幕内下位で白星を重ねる。1敗は全勝の横綱、大関にとっても不気味な存在かもしれない。再起を遂げた阿炎が、家族のためにも大きな夢を追う。【実藤健一】