6場所出場停止明けで大関経験者の西三段目22枚目朝乃山(28=高砂)が、東三段目22枚目剛士丸(25=武蔵川)を寄り切りで破り、復帰場所で白星発進を飾った。昨年夏場所11日目の5月19日以来、418日ぶりの本場所出場だった。

取り組み後はオンライン取材に対応。出場停止処分後、約1年2カ月ぶりに公の場で口を開いた朝乃山は「花道に入ってからたくさんの方が拍手してくれてすごくうれしかった。1年前に自分の不祥事で出場停止になったので、来年(今場所)の復活まではしっかり稽古して体が落ちないように、もう1回応援、信用してもらえるように頑張りました」と話した。

昨年5月に日本相撲協会作成の新型コロナウイルス対策ガイドライン違反が発覚し、協会の事情聴取に虚偽報告をするなどして同年6月に6場所出場停止処分を受けた。同時期に祖父が、同年8月には父靖さんが急逝するなど失意の時期を過ごした1年間。出場停止期間中で最もつらかった事を問われると「不祥事を起こした時に相撲協会にウソをついたことです」と明かした。

だからこそ、もう1度信用してもらえるように励んできた1年でもあった。「ウソをついたことで日本相撲協会や部屋のみんな、応援してくれるファンの皆さんに応援してもらえないと思っていた。やっぱりまだ許されるわけではないですけど、しっかり土俵の上で戦っていく姿をファンや日本相撲協会の皆さんに見てもらって信用を取り戻していきたいです」と決意した。

復帰場所を迎えるにあたり、富山商高時代の恩師、浦山英樹さん(故人)からもらったしこ名「朝乃山英樹」の下の名前を、父の靖さんから授けてもらった本名の「広暉」に改名した。改名の理由については「不祥事を起こしてもう先生の名前を名乗れないと思った」といい、母と相談した結果、「復帰した時には父からもらった名前をつけることを去年から考えていました」と明かした。

16年春場所で三段目最下位の100枚目格で初土俵を踏んだだけに、再起をかけるにはこれ以上ない番付で今場所を迎えた。「入門した時も三段目の100枚目だった。もう1度初心に戻って番付を上げていきたい」と決意。1年ぶりに本土俵に上がった感覚については「久しぶりの本土俵。もう1度、本土俵で相撲を取らせて頂けることがすごくうれしかった。日本相撲協会、応援してくださるファンの皆さんに信用してもらえるように相撲と向き合っていきたい」と真摯(しんし)に語り、第二の土俵人生への1歩を踏み出した。