大相撲春場所(12日初日、エディオンアリーナ大阪)を新十両として迎える玉正鳳(29=片男波)が4日、序二段力士2人を相手に相撲を取るなど、都内の部屋でたっぷり汗を流した。

東前頭筆頭で関取衆最年長38歳の玉鷲との三番稽古は、15番取って2勝13敗。間髪入れずに序二段2人を相手に、前方に並ばせたり、前後に挟まれたりと、仕切りの形を変えながら13番相撲を取って5勝8敗だった。随所に四股やすり足などを盛り込むなど、激しい稽古内容の中での計28番だったが「弱かったですね」と、反省の弁を述べ、向上心の高さをうかがわせた。

1対2の稽古は、約半年前から始めたといい、兄弟子の玉鷲が「体を素早く動かせるようになる」と、瞬時の対応力が身に付くと代弁した。モンゴル出身としては珍しい遅咲きで、2011年秋場所の初土俵から、11年半かけて新十両に昇進。春場所の新番付発表翌日、2月28日から、あこがれの白まわしを着けて稽古を始めた。真新しかった白まわしも、すでに汚れ始めているのが、豊富な稽古量の証し。白まわしを着けて稽古する毎日が「気持ちいいですね。長い間待っていたので」と話し、顔をくしゃくしゃにして笑った。

関取の象徴でもある化粧まわしは、師匠の片男波親方(元関脇玉春日)の知り合いで、部屋の後援者に作ってもらったという。締め込みは「青空のイメージ。空を見るのが好きなので」と、鮮やかな青色に決めた。ただ、他の代表的な関取の象徴はお預け状態。まだ個室は与えられておらず、若い衆2人と同部屋で生活している。極め付きはなんと、先場所までと同様、春場所も玉鷲の付け人を務めることが正式に決まったと明かした。

「自分にも1人付きますが、部屋の力士が足りないので。全然気にしていないですよ」と、笑顔で話した。片男波部屋の力士は関取2人、若い衆2人の計4人。「どちらかに2人ついてしまったら、玉鷲関と自分の支度部屋が東西で分かれた時に、対応できないので、それぞれに1人は付いている感じになります。自分は取組が終わったら、玉鷲関の付け人の仕事をします」と、当然のことのように話した。さらに「ちゃんこ番もそうじもやりますよ。若い衆の時よりは、少し仕事量は減らしてもらっていますが」と続けた。

春場所の十両は、ともに幕内優勝経験もある大関経験者の朝乃山、栃ノ心が名を連ねる。さらに幕内優勝経験者は逸ノ城、徳勝龍もいるため計4人。レベルの高い争いが予想されるが「右前みつを取れば負けない。稽古では10回やって10回負ける相手でも、本場所の1番、一発勝負なら分からない。全員倒したい」と、力を込めた。

2月上旬の日本相撲協会の健康診断で120・5キロだった体重が、最近計測したところ128・5キロと、8キロ増量した。「前はご飯を食べられず、戻してしまうこともあったのですが、今はご飯を食べる量を増やしました。といっても、丼に山盛り1杯なので、そんなにでもないですけど(苦笑)。体重が増えると、相手にかかる圧力も強くなる」と、手応えを感じているという。新十両昇進の理由は「毎日基礎をやってきた成果だと思います」と、関取衆では細身だが、四股、すり足、てっぽう、腕立て伏せなどで、つくり上げた肉体に、自信も備わった。初土俵前に稽古していた高島部屋を含めると、部屋の閉鎖などで計5部屋を渡り歩いてきた苦労人は、4つ目のしこ名の通り「正しい人生を送りたい」と力説。実姉ミシェルさんの夫であり、義理の兄でもある、尊敬する玉鷲のように、真っ向勝負の毎日を楽しみにしている。