大関豊昇龍(24=立浪)が、優勝争いのトップを守る5連勝を飾りながらも、取組後に初めて審判部から呼び出されて注意された。幕内3場所目で東前頭4枚目の豪ノ山を押し出し。ただ、取組前の仕切りでなかなか手をつかず、駆け引きのような立ち合いに、幕内後半の審判長を務めた粂川親方(元小結琴稲妻)から“おしかり”を受けた。それでも関脇琴ノ若、熱海富士、一山本の両平幕とともにトップを並走。叔父の元横綱朝青龍と同じく大関2場所目で優勝を目指す。

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にらみ合ったまま、空気が張りつめた。豊昇龍はなかなか立ち合いの動作に移行しなかった。1歳上の大卒豪ノ山に対峙したが、高卒の自身の方が初土俵は早い。何よりも番付も実績も上回っているだけに、にらみつけられ「ちょっと熱くなった」。叔父譲りの負けん気の強さに火が付いた。観念したように相手が先に手をついても、中腰の姿勢のまま。たまらず相手が嫌って仕切り直す流れが2度も続いた。ようやく立つと押し込まれながらも反撃。一気に押し出した土俵上から、再びにらみつけた。

支度部屋に戻り、風呂に入る前に報道陣に対応していると、呼び出しを通じて「審判部に来るように」と声が懸かった。まげだけ直し、まわし姿のまま審判部室へ。粂川親方から「横綱、大関は力士の手本にならないといけない」と口頭で注意を受けた。審判部に行く前は「相手が何を考えているか分からなかったから」と、駆け引きではないと主張。ただ“おしかり”後は「自分も悪いところがあった」と反省した。

幕内では慣例的に、同じ取組で3度の立ち合い不成立があった際は、審判部に呼び出される。今回は明確な不成立ではなかったが、悪質とみなされて豊昇龍だけ呼び出された。同親方は「ひどすぎる。焦らしすぎ。相手は手をついているんだから。集中していたら立てるはず」と、駆け引きのような立ち合いに立腹していた。それでも関取では自己最長を更新する、初日からの5連勝に「しっかり集中していた。悪くない」と納得顔。大関2、3場所目で連続優勝し、一気に横綱へと駆け上がった叔父の背中を追う。【高田文太】