大関経験者の西前頭7枚目・朝乃山(29=高砂)が白星発進した。一山本のもろ手突きからの突き放しをのけぞりながら残し、左からおっつけながら1歩も下がることなく押し出した。
東前頭筆頭だった先場所は、新型コロナウイルスのガイドライン違反による6場所出場停止明けから初めて負け越した。場所前に左ふくらはぎを肉離れし、7日目まで休場。最終的には4勝4敗7休となり、大きく番付を下げた。
左ふくらはぎ痛の影響は場所後も続き、昨年末まで相撲を取る稽古はできなかった。そんな中、年明け最初の出稽古で、今場所新入幕の大の里に1勝3敗と負け越した。敗れた3敗は全て完敗。「本当に悔しかった」と、体力よりも先に気力が一気に高まった。
その後は時津風部屋に2度出稽古したが「番数を取りたかった」と今場所直前は部屋で、十両朝紅龍らと連日25番ほど取り、スタミナも土俵勘も取り戻した。
大の里に負け越したこと以上に、気持ちを高ぶらせたのは、元日に起きた能登半島地震だった。場所前に朝乃山は「元日から悲しいニュースがあって、今場所、北陸出身力士は、よりいっそう力が入ると思う。一人一人が頑張れば、元気や勇気を与えられる。自分も2桁勝って、優勝争いに加わるよう頑張りたい」と、力説していた。
富山市の実家には飲料水としても生活用水としても使えるよう、500ミリリットルの水が30本入った箱を10箱送った。幸い実家や能登半島に近い富山・氷見市の祖母は日常を取り戻した。ただ「自分が白星を届けることで、少しでも何かを感じてくれたら」と、北陸地方を元気づけたい思いは変わらない。
3月に30歳になる。節目の年が暗い出来事で始まった分「この1年が勝負」と決意も新た。謹慎休場を除き、年6場所で唯一、初場所は負け越しなしと験の良さにも後押しされ、20代最後の本場所で、目標とする大関復帰のきっかけをつかむつもりだ。

