最初で最後のチャンスをつかむ。大相撲の新大関琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が6日、千葉・松戸市の部屋で春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)に向けて稽古を再開。四股やすり足などで汗を流した。5月の夏場所からは元横綱の祖父から「琴桜」の名を継ぐ予定。父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から継いだ「琴ノ若」で、大関として土俵に立つ唯一の場所で初優勝を目指す。
大関に昇進しても、基礎を大事にする姿勢は変わらなかった。琴ノ若は土俵周りで四股を、土俵に入ってすり足を繰り返した。自己最多更新の13勝で、優勝同点だった1月の初場所千秋楽以来、9日ぶりに稽古を再開。06年の元横綱白鵬以来、18年ぶり9人目の新大関優勝を目指す春場所の準備が始まった。部屋の力士には「大関」と呼ばれ、稽古場の木札も「大関」へ。「師匠を超えたんだなというのは、多少はある。でも、もう1つ上がある」。周囲は変わり始めても、挑戦者精神は変わらない。
「大関琴ノ若」として土俵に立つのは、春場所が最初で最後だ。父のしこ名で大関に上がるという、1つの目標は達成した。琴桜に改名前に達成したい、もう1つの目標は「琴ノ若で優勝」だ。ラストチャンスだが「1場所しかないと思ってやれば臨み方も変わる」と、背水の陣の心意気。初場所も、大関昇進目安の三役で3場所33勝到達へ、負けられなくなった14日目の大関霧島戦に勝ち、千秋楽の翔猿戦も勝った。後がない状況こそ力を発揮する。
唯一の懸念事項は稽古時間の確保だ。今後は父の故郷の山形県をはじめ、遠方も含めてあいさつ回りやイベントが相次ぐ。多くの新大関が苦労してきた道でもある。ただ琴ノ若は、3日の節分豆まきや4日の元大関栃ノ心の引退相撲で、声援が増えた実感を引き合いに「こういう経験も、上がらないとできない。うれしい悲鳴」と堂々と話した。「やることをやるだけ」。昇進しても偉ぶらない。琴ノ若で初優勝し琴桜で綱とりへ。新たなステージの戦いが始まる。【高田文太】

