横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)が苦しみながら目標の10度目の優勝を達成した。大関琴桜に敗れ、3敗で隆の勝に並ばれた。優勝決定戦では隆の勝にもろ差しを許すが、横綱の底力を発揮して寄り切った。今年初場所以来10度目の優勝は2場所連続途中休場明け。横綱在位18場所で皆勤は8場所も、うち6場所で優勝と番付の頂点に立つ威厳を示した。

まさかを乗り越えた。先に隆の勝が勝って迎えた結びの一番。照ノ富士は過去6戦全勝だった大関琴桜の上手出し投げで土俵に腹ばいになった。独走状態からまさかの優勝決定戦。しかし、横綱の心に乱れはない。「何回もこういう状況で相撲をとってきた。特に考えることなく、どっしり構えていこうと思った」。

決定戦は前日14日目に完敗した相手にもろ差しを許した。あわてず圧力をかけながら右を巻きかえると胸を合わせて一気に運んだ。まさに横綱の相撲だった。

横綱在位18場所目だが全休5、途中休場5場所で皆勤は8場所しかないがうち6場所が優勝と勝負強さを誇る。しかし、体の悲鳴が強まっていく。肘、膝、足首とあらゆる関節を分厚いサポーターが覆う体で成し遂げた10度目の優勝。「ホッとしてます。とりあえずは皆さんに約束していたことを果たせたかな」とかみしめた。

今場所にかける意気込みはすさまじかった。6月末、大阪・堺市内での合宿を同い年で親交が深いボクシングの元世界2階級制覇王者の亀田和毅(33)が訪ねた。横綱は和毅に「ここ(名古屋場所)に勝負をかける。体がきついから、次(の場所)にいったらもっときつい。優勝10回の目標あるから。それだけは絶対にする」と打ち明けた。

この日も優勝決定戦の前、付け人が懸命に右太ももをほぐした。極限まできていた肉体で、本来は不可能だったかもしれない「1日2番」を取りきった。気力だけが横綱を支えた。

和毅は今場所の照ノ富士の気迫あふれる相撲を「気持ちが伝わる、ホンマに。次のことは考えてない相撲をとっている」と言った。その言葉が象徴する15日間。照ノ富士は「入門して14年。目指してきた相撲にちょっとだけ近づくことができたかな」。孤高のひとり横綱は、さらに高みを探求していく。【実藤健一】

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